エアバス(読み)えあばす(英語表記)air bus

デジタル大辞泉 「エアバス」の意味・読み・例文・類語

エアバス(airbus)

交通量の多い区間を、低運賃で運航する旅客機。現在は、国内線または中・短距離国際線就航する、ジャンボジェットより小型のジェット旅客機をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「エアバス」の意味・読み・例文・類語

エア‐バス

〘名〙 (airbus) (もと、交通量の多い都市間を安い運賃で輸送する旅客機の意) 中・近距離間の大量輸送を目的としてつくられた広胴型旅客機。エアロバス。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エアバス」の意味・わかりやすい解説

エアバス
えあばす
air bus

もともとは国内幹線または近距離国際線運航のために開発された中・短距離用広胴大型ジェット輸送機のこと。現在では、機材としてよりも、航空機メーカーのエアバス・インダストリー社Airbus Industrieの略称およびその製品名として用いられる場合が多い。

[落合一夫]

歴史

本来は交通量の多い都市間を、速くしかも低運賃で運航する路線バス形態の大量輸送方式を意味したが、やがてそうした路線に使用する機種をさすようになった。1969年ごろから、より厳しくなった運航環境(騒音規制、大気汚染対策料、燃料および経費の節減、狭く旧式な空港への発着、安全の絶対確保などの問題)に対応すべく、機体空気力学的な面の改良はじめ諸システムの自動化など、新しい構想を数多く盛り込んで設計された革新的な一群の機体が生まれた。これらは第3世代ジェット輸送機とよばれている。主として座席数250~300、時速940キロメートル(マッハ0.84)程度、航続距離3000キロメートル前後、胴体幅約6メートル、客室内には2本の通路をもった双発または3発のワイドボディ(広胴)機をいい、ジャンボ機との相違は、やや小型で航続距離が短いこと程度である。第3世代機の代表としては、イギリス、フランス、旧西ドイツ共同開発のA-300、アメリカではロッキード社のL-1011トライスター、マクダネル・ダグラス社のDC-10などがあった。これらはすでに第一線から退いている。

[落合一夫]

エアバス・インダストリー社

航空機メーカーのエアバス・インダストリー社は、フランスが中心となり、イギリス、ドイツ、スペインオランダベルギーなどのヨーロッパの主要航空機メーカーが出資して、A-300機の生産・販売のために、1970年に設立されたメーカーである。同社の機体の各部分は前記の各メーカーが製作し、最終組立ては同社の本社があるフランスのトゥールーズに送られて行われる。A-300機(300人乗り)は、1974年に完成したが、当初は設計目標の関係で双発機であり航続性能が不十分なうえメーカー自体にジェット輸送機の生産や販売に関する実績がないことなどの理由で販売不振が続いた。しかし、EUヨーロッパ連合)の首脳を巻き込み、思い切った販売方針をとることによりしだいに注文機数が増加し始めた。さらに、離陸重量を変えて長距離型や短距離型にしたり、胴体の長さを変えて乗客数を変更した派生型、あるいは貨物専用機などを次々に開発、航空会社のいかなる要求にも応じられるようにして販路の拡大を図った。

 また、1980年代に入ると、A-300より若干小型の近距離型であるA-310や、操縦系統にフライ・バイ・ワイヤ方式を採用して操縦ハンドルのかわりにジョイ・スティックを用い、自動化を徹底して安全の確保を図るという、画期的な機構を備えて第4世代ジェット輸送機とよばれるA-320、さらに四発化してジャンボ機に相応する長距離性能をもたせたA-340、A-340と基本設計を同じとする中・短距離型の双発機A-330を生産するなど、質・量ともに陣容を充実させ、ジェット輸送機の生産では自他ともに世界一と認めるボーイング社に、受注機数で上回る大メーカーに成長した。さらに、A-300-600Rの後継機として、空力面と装備を中心に改良を進めたA-330-500を開発計画中である。これは、同社の生産の主力である双発機が、エンジン性能および信頼性が向上して長距離運航でも従来の三発機や四発機と同等の性能が得られるようになったことも大きく影響している。

 2000年12月現在、ジャンボ機をしのぐ超大型機A-380について、すでに50機の確定注文を受け、2006年の就航を目標に生産を開始している。A-380は、胴体幅6.43メートルの超ワイドボディ、オールダブルデッキ(総2階建て)、国際線型(ファースト、ビジネス、エコノミーのクラス分けがある)で555人、オールエコノミー型(飛行距離が短いのでエコノミークラスのみで構成、快適性は劣るが乗客数を多くし運賃を安くする)で850人乗り、最大離陸重量540トンとなる。また同社として初めての軍用型A-400Mの開発に入るなど、ボーイング社と並んで世界のジェット輸送機のマーケットを二分して活動を続けている。

[落合一夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「エアバス」の意味・わかりやすい解説

エアバス
airbus

1970年代に相次いで現れた300席前後の大型輸送機の総称。1960年代前半にヨーロッパ各国で都市間用の経済的な大型輸送機が構想され,これをエアバスと呼び始めたのが語源といえる。この構想からフランス,西ドイツを中心にヨーロッパ共同の事業体エアバス・インダストリーが設立され,エアバスA300(双発250~300席)が作られた。一方,アメリカでも60年代後半に国内幹線用の大型輸送機が要望され,マクダネル・ダグラスDC10とロッキードL1011トライスター(ともに3発300~350席)が作られた。DC10は71年,L1011は72年,A300は74年にそれぞれ就航し,より大きいボーイングB747(4発400~500席)を俗にジャンボというのに対して,これら3機種(発達型を含めて)がエアバスと呼ばれていた。ともに客室に通路が2本ある広胴型で,経済的で騒音が低いのが特色。元来は国内線や近距離国際線用だが,大陸間国際線用の長距離型も作られている。80年にはソ連でも同規模の広胴機イリューシンIl86(4発300~350席)が就航した。なお,エアバスという名称は,これらの大型輸送機の総称として定着する以前,頻繁に運航される航空便に付けられたこともあった。
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百科事典マイペディア 「エアバス」の意味・わかりやすい解説

エアバス

国内線や短・中距離の国際線に使用される大型輸送機の通称。ふつう座席数300前後のものをさし,より大きいジャンボジェットと比較して使われる。客室内に通路を2筋もつワイドボディ機であることが最大の特徴で,騒音の少ないことも要求される。ダグラスDC10,ロッキードL1011トライスターのほか,フランスと旧西ドイツが共同開発し英国なども加わったエアバスA300(エアバス社が製造)などが代表機種。1980年代には旧ソ連でもIl86が開発就航している。
→関連項目空港ダグラストゥールーズロッキード事件

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エアバス」の意味・わかりやすい解説

エアバス
Airbus S.A.S.

ヨーロッパの航空機メーカー。大型ジェット旅客機の需要にこたえるとともに,長く航空産業に君臨してきたアメリカ合衆国の企業との競合を目指し,企業連合エアバス・インダストリーとして 1970年に発足した。当初はフランスのアエロスパシアルとドイツのドイツ・エアバスによる 50%ずつの出資だったが,1971年にスペインの CASAが参加,1979年にイギリスのブリティシュ・エアロスペース BAeも加わった。 2000年フランス,ドイツ,スペインの合弁企業EADSの傘下に入り,同社がエアバス株の 80%を保有,BAeの後身BAEシステムズが 20%を保有して,2001年に株式会社となった。この間,エアバスが開発,製造してきた航空機は,1972年 10月に初飛行した A300B1双発ワイドボディ機,その胴体を短くして航続距離を伸ばした A310,4発の長距離機 A340,その双発型 A330,胴体を細くした近距離用 A320シリーズ,そして2階建てのスーパージャンボと呼ばれる A380など。こうした実績により,エアバスはボーイングと対等の競争を演ずるようになった。本社は南フランスのツールーズ国際空港にある。

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世界大百科事典(旧版)内のエアバスの言及

【アエロスパシアル[会社]】より

…航空機のほか,ヘリコプター,ミサイル,宇宙船,エンジン,水中翼船,海洋調査船,航空用電子機器,船舶用機器,産業用電子機器などを開発,製造している。民間航空機としては,イギリスのブリティッシュ・エアクラフト社British Aircraftと共同開発し1969年に初飛行した超音速旅客機コンコルドや,西ドイツのドイッチェ・エアブス社Deutsche Airbus,スペインのCASA,オランダのフォッカー社Fokkerおよびイギリスのホーカー・シドリー社Hawker Siddeleyと共同開発し71年に初飛行したエアバスA‐300Bが主力。このほか,戦闘機,爆撃機,軍用ヘリコプターなども製造している。…

【輸送機】より

…航空輸送需要の増大と技術の進歩でしだいに大型高速の輸送機が作られ,52年にはジェット輸送機が就航した。70年からは客室に通路が2本ある広胴型機(ワイドボディ機)がジャンボやエアバスと呼ばれて登場し,500席以上,貨物なら100tは積める大型機も飛んでいる。一方,輸送機は路線の交通量に合った大きさがよいので,コミューター輸送機と呼ばれる小型のものも多く使用されている。…

※「エアバス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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