訶梨勒(読み)カリロク

デジタル大辞泉 「訶梨勒」の意味・読み・例文・類語

かりろく【××勒】

《〈梵〉haritakī
インドなどに産するシクンシ科の高木。高さ30メートルに達し、葉は長楕円形。枝先に白い花が群がって咲く。果実風邪便通などの薬にし、材は器具用にする。
室町時代象牙・銅・石などでカリロクの実の形を作り、美しい袋に入れ、柱に掛けた飾り物

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精選版 日本国語大辞典 「訶梨勒」の意味・読み・例文・類語

かりろく【訶梨勒】

〘名〙 (harītakī の音写)
① シクンシ科の落葉高木。中国、インドシナ半島、マレー半島に産し、日本へは八世紀ごろ僧、鑑真が伝えたといわれる。高さは三〇メートルに達し、葉は約一〇センチメートルの長楕円形で対生。花は白色。果実は褐色の卵円形で、通便、咳止め薬になり、果汁からはミロバランという黄色染料をとる。材は器具用。
正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献薬帳「呵梨勒一千枚」
随筆・貞丈雑記(1784頃)六「出陣の時かりろくを呑むと云ふ事旧記にあり。是は訶黎勒丸(かりろくぐゎん)と云ふ薬也」
③ 室町時代の柱飾り。①の実をかたどった長さ二〇センチメートルほどの石・銅・象牙製のもので、美しい袋などに入れて座敷に下げて飾りとした。①の実が薬用となるため、邪気ばらいとして柱にかけたのが始まり。〔俚言集覧(1797頃)〕

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世界大百科事典(旧版)内の訶梨勒の言及

【香】より

…趣味,実用にも用いられ,正倉院にもあるえび香は沈香,白檀,丁香,麝香,甘松等を砕粉調合したものであるが,薫衣,防虫に用いられ,薫衣香ともいう。調合した香を袋に入れ,柱に掛けて装飾をも兼ねれば掛香,薬玉(くすだま),訶梨勒(かりろく)となり,懐中にすれば匂袋である。翫香は実用性を脱して趣味性,審美性に徹したもので一木の沈香木を心ゆくまで賞翫する一炷(いつちゆう)聞,文学的美意識と結合した組香による聞香(もんこう)を生み出し,日本独自の佳薫の芸道を成立させた。…

【香道具】より

…透しのある球形の香炉で灰を入れる部分はつねに水平を保つようにくふうされたのが毬(まり)香炉(香玉,香毬(こうまり),佩香(はいこう))で,小型の毬香炉は懐中して留香にも用いられた。調合した香を袋に入れ柱に掛ける掛香(懸香)や香囊,訶梨勒(かりろく)などもある。組香【神保 博行】。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」