臭化ナトリウム(読み)しゅうかナトリウム(英語表記)sodium bromide

改訂新版 世界大百科事典 「臭化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

臭化ナトリウム (しゅうかナトリウム)
sodium bromide

化学式NaBr。水溶液からは常温で2水和物NaBr・2H2Oが析出する。これは無色単斜晶系結晶で,融点50.7℃,比重2.17。2水和物の脱水,または51℃以上の晶出で無水和物が得られる。無水和物は無色立方晶系の結晶で,岩塩型格子。融点755℃,沸点1390℃。比重3.205(17.5℃)。屈折率1.6412。水100gへの溶解度94.1g(20℃),121g(100℃)。エチルアルコールに難溶。中枢神経抑制作用がある。ふつう鉄粉と臭素過熱水蒸気を作用させて得たFeBr2・2FeBr3炭酸ナトリウムと熱して2水和物とし,脱水して無水和物を製造する。高純度のものはシュウ酸ナトリウムを水溶液中で臭素により酸化し,溶液を乾固後,再結晶して2水和物をつくり,水素気流中で融解して無水和物とする。写真用,医薬品(鎮静剤,鎮痙(ちんけい)剤)製造に用いられる。循環機能の弱い患者には臭化カリウムよりも臭化ナトリウムを用いるのがよい。
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化学辞典 第2版 「臭化ナトリウム」の解説

臭化ナトリウム
シュウカナトリウム
sodium bromide

NaBr(102.89).シュウ酸ナトリウム水溶液に臭素を作用させて濃縮すると得られる.工業的には,臭化カリウムと同様の方法でつくる.水溶液からは二水和物が析出する.二水和物は無色の単斜晶系結晶.密度2.17 g cm-3.融点50.7 ℃ で水和水に溶ける.水素気流中で加熱脱水して無水物となる.水に易溶,エタノールに可溶.無水物は無色の等軸晶系結晶.岩塩型構造.格子定数a = 0.5961 nm.融点755 ℃,沸点1390 ℃.密度3.20 g cm-3吸湿性で,水に易溶,エタノールに微溶.医薬品(鎮静剤),臭化物の製造,写真用剤,人工海水成分などに用いられる.[CAS 7647-15-6:NaBr][CAS 13466-08-5:NaBr・2H2O]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「臭化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

臭化ナトリウム
しゅうかなとりうむ
sodium bromide

ナトリウムと臭素の化合物。臭素または臭化水素を炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液と反応させることによってつくられる。水溶液から二水和物が得られるが、これを脱水すると無水和物となる。無色、結晶性の固体。二水和物は単斜晶系の結晶で、51℃で結晶水を失う。いずれも水によく溶ける。写真、医薬(鎮痛剤、鎮痙(ちんけい)剤)に用いられる。

[鳥居泰男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「臭化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

臭化ナトリウム
しゅうかナトリウム
sodium bromide

化学式 NaBr。無色の立方晶系。塩味と弱い苦みがある。吸湿性であるが潮解はしない。比重 3.21,融点 747℃,融点 1390℃。水,アルコールに可溶,水溶液は中性。主として写真用に使われる。

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