聞渡(読み)ききわたる

精選版 日本国語大辞典 「聞渡」の意味・読み・例文・類語

きき‐わた・る【聞渡】

〘他ラ四〙 (「わたる」は継続を表わす)
長い間ずっと聞き続ける。聞いて過ごす。
万葉(8C後)一一・二六五八「天雲の八重雲隠れ鳴る神の音のみにやも聞度(ききわたり)なむ」
※宇治拾遺(1221頃)九「よき男して、事かなひてありと斗(ばかり)はききわたりけるが」
② そこと聞いて、通り過ぎる。
※栄花(1028‐92頃)松の下枝「尋(たづ)ぬれど昔ながらの橋もなし跡(あと)をぞそれとききわたりける」

きこえ‐わた・す【聞渡】

〘他サ四〙
① (「きこえ」が、言うの意の謙譲語の場合) お頼みして、権限責任などをそちらへお移し申しあげる。お願いして移管する。
源氏(1001‐14頃)須磨「よろづの事、皆西の対にきこえわたし給ふ」
② (「きこえ」が、聞こえるの意の場合。「渡す」は、ある動作をあまねく行きわたらせるの意) あたり一面に聞こえるようにする。
※源氏(1001‐14頃)夕霧「山おろし心すごく、松のひびき木深(こぶか)くきこえわたされなどして」

きこえ‐わた・る【聞渡】

〘自ラ四〙
① (「いいわたる(言渡)」の謙譲語) 申しあげ続ける。気持を訴え申しあげ続ける。求婚申しあげ続ける。
※源氏(1001‐14頃)葵「ひめ君は、としころきこえわたり給ふ御心ばへのよの人ににぬを〈略〉御心とまりけり」
② (「きこえ」は、世に聞こえるの意) 世間評判になる。世間に広く知れわたる。
※天草本平家(1592)二「ミヤコニ qicoyevatatta(キコエワタッタ) メイバガ アッタガ」

きき‐わた・す【聞渡】

〘他サ四〙
① あたり一帯の音を聞く。
※源氏(1001‐14頃)夕顔白妙の衣うつ砧の音もかすかにこなたかなたききわたされ」
② たえず聞く。
※源氏(1001‐14頃)宿木「ちかき寺の鐘の声もききわたさまほしくおぼえ侍を」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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