立花(いけ花)(読み)りっか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「立花(いけ花)」の意味・わかりやすい解説

立花(いけ花)
りっか

いけ花様式の一つ。立華とも書く。その立てる形式から初期は「たてはな」とよばれたが、様式の整備とともに「りっか」と呼称されるようになった。その初見は1683年(天和3)刊の『立花大全(だいぜん)』で、このなかで立花は、心(しん)、正心(しょうしん)、副(そえ)、請(うけ)、見越(みこし)、流枝(ながし)、前置(まえおき)の七つ道具、すなわち基本となる役枝(やくえだ)が明確に規定され定型化した。この形式は室町時代、15世紀末から座敷飾りとして発展した「たてはな」を、江戸初期のいけ花の名手として知られる池坊専好(いけのぼうせんこう)(2代)が寛永(かんえい)(1624~44)ごろ大成したものである。立花は自然のありのままをいけるものではなく、それを象徴化することにより理想の世界を具現しようとするもので、2代目専好は『立花口伝書(くでんしょ)』に「立華の実躰(じったい)というのは、須弥山(しゅみせん)に標(しる)し、七種の枝葉を以(もっ)て、世界の山野水辺をあらわす」と述べている。そして「円正な形であらわし」というように、心を中心にほかの役枝が調和均衡よく配置され、それを統一的に球状にまとめた姿をよしとする。立花は元禄(げんろく)期(1688~1704)に隆盛を極めたが、七つ道具を不可欠な構成要素とするところから固定化し、これに繁雑な形式も加わって豪華な形式のものとなり、当時のはで好みの富裕な町人層に迎えられた。こうしたところから人為的要素が強くなり、当初の自然のままの花材を使う「生(う)ぶ立て」から花材を型にあわせるための技巧的な「幹(みき)づくり」の手法に進み定型化に拍車をかけ、その創造的な生命感を失い古典化したが、伝統的な洗練された造形表現には今日もなお学ぶべき多くのものがある。

[北條明直]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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