立花(読み)たてばな

精選版 日本国語大辞典 「立花」の意味・読み・例文・類語

たて‐ばな【立花】

〘名〙 (「たてはな」とも)
① 仏前にそなえる花の法式。銅製の花器に松や梅などの花木を立て生けにするもの。池坊流、大受院流、周玉流、能阿彌流などがあった。りっか。
※松井本和泉式部集(11C中)「いづくへゆくぞととはせければ、ひえの山の念仏の立花になんもてまかるといひければ」
② 池坊流花道の形式の一つ。桃山末期から江戸初期頃、初世・二世の池坊専好が大成したもの。針金などを用いて、花・枝・葉などをさまざまに曲げ整えて、大がめに挿して床飾りなどとする。また、その花。一説に、室町中期頃、立花(りっか)・砂の物・胴束の三形式に分かれる花道初期の写実的様式の呼び名ともいう。りっか。
※御湯殿上日記‐文明九年(1477)七月三日「宰相中将殿ゑ御たてはなまいらるる」
③ 「華」の字を、「花」の字と区別していう語。〔俚言集覧(1797頃)〕

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デジタル大辞泉 「立花」の意味・読み・例文・類語

りっ‐か〔‐クワ〕【立花/立華】

花や枝などを花瓶に立てて生けること。たてばな。
生け花の型の一。江戸前期に2世池坊専好いけのぼうせんこうが大成した最初の生け花様式。真とよばれる役枝を中央に立て、それにそえうけなどとよばれる七つの役枝(七つ道具という。のちに九つ道具となる)をあしらって全体として自然の様相をかたどったもの。現在、池坊に伝承されている。たてばな。→七つ道具

たちばな【立花】

姓氏の一。
[補説]「立花」姓の人物
立花隆たちばなたかし
立花北枝たちばなほくし
立花宗茂たちばなむねしげ

たて‐ばな【立(て)花】

《「たてはな」とも》
花瓶に立てて仏前などに供える生花。
室町末期に様式が定まった、床飾りの花。のち立花りっかに発展した。
「華」の字を、「花」と区別していう語。

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日本歴史地名大系 「立花」の解説

立花
たちばな

[現在地名]度会町長原 立花

宮川中流右岸の段丘上にある。北は麻加江まかえ村、南は小山谷こやまだに川で南鮠川みなみはいかわ村と境をなしていたと考えられる。「神鳳鈔」に伊勢神宮内宮領として「立花御薗」とある故地。近世を通じて長原ながはら村の枝郷。字山崎やまざきに山崎屋敷跡とよぶ空堀をもつ館跡がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「立花」の意味・わかりやすい解説

立花 (りっか)

いけばな様式の一つ。立華とも書く。花道成立以前から行われていた花,草,木を花瓶に〈立てる〉形式から,古くは〈たてはな〉と呼ばれ,室町時代には定式化した。成立当初の〈立花(たてはな)〉の形式と目的は,室内を飾り,それを眺め楽しむということであった。1490年ころになると,花瓶に〈立て〉られる種々の草木のうち,その中心となるものを〈しん〉(心,身,真)と呼び,それに添えるものを〈下草〉と呼んで,それぞれの約則名によって立てられるようになった。それがいわゆる立花(たてはな)様式の誕生になる。立花の基本的形式は,座敷飾が成立する過程の上で完成されている。座敷を荘厳にして飾る役目をはたす立花は,花を立てる人間のより美しく見せようとする作意がつのり,またそのために技法の洗練へと進み,さらにそれに相応した理論の形成や種々の法則と心得などの成立を要因として,近世に至り新しい立花(りつか)の新生をみた。立花の大成は元和から寛文までの間(1615-61)と考えられ,それが普及し爛熟した時代は貞享から元禄(1684-1704)ころの時期である。当時の立花は,それを描写した花形絵の現存によって知られる。花形絵は,《古今立花集》(1671)がその初刊であり,以後,《立花大全(古今立花大全)》など,立花の秘伝を公にした花伝書が続いて刊行された。時代によって,立花の形姿をこしらえる技法上の法則は同一ではないが,天然の気を一つの花瓶に写す象徴的表現は,表現技巧の極致であるといえよう。
いけばな
執筆者:

立花 (たちばな)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「立花」の解説

立花
りっか

立華とも。いけばなの花形(かぎょう)。江戸前期に2世池坊専好の跡を継いだ専存没後,その子専養を2世専好の門下の安立坊周玉(あんりゅうぼうしゅうぎょく)や十一屋(じゅういちや)太右衛門らが擁立し,寛文年間に立花(たてはな)から立花(りっか)を創出。立花は役枝(やくえだ)を固定化し,胴作(どうづくり)の景の表出を競うものである。その後,表現形式を変化させていったが,明治10年代に池坊専正が胴作を含むすべてを固定化し,現在の正風体(明治)立華が成立した。1962年(昭和37)には新しいいけばなの理論をとりいれた現代立華が制定された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「立花」の意味・わかりやすい解説

立花
たちばな

福岡県南部,八女市南西部の旧町域。矢部川の中流域から筑肥山地の北斜面に位置する。1955年光友村,北山村,白木村,辺春村の 4村が合体して町制。2010年八女市に編入。米,コムギ,チャ(茶),たけのこ,キーウィフルーツなどを産するが,特にミカン栽培が盛んで,町名はミカンの古名の橘に由来する。

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旺文社日本史事典 三訂版 「立花」の解説

立花
りっか

華道の一形式
東山文化の時代に池坊専慶らによって成立し,書院造の床の間の飾花の芸術として栄え,桃山〜江戸時代に池坊専好が色彩本位の豪華な様式を大成した。

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世界大百科事典(旧版)内の立花の言及

【池坊】より

…1462年(寛正3),池坊専慶が金瓶に草花数十枝をたてたのを《碧山日録》は,〈皆その妙を嘆ずる也〉とつたえ,1525年(大永5),池坊専応は《二水記》のなかで,〈池坊六角堂執行花上手也〉と記されている。16世紀の中ごろは,いわゆる天文口伝書の時代であるが,《池坊専応口伝》や《専栄花伝書》がつたえるとおり,いろいろの立花(たてはな)の系統が池坊のなかにまとまってゆく時期であった。桃山時代になると,ほかの流派はほとんどみられず,立花を家業とする池坊の位置は定着した。…

【いけばな】より

…供花を立てる花瓶は水瓶(すいびよう)形で,器ののどの部分が細く口がややひろがっているため,挿した形は花が直立するようになり,器ののどの細い部分につめものをして花を安定させる留め方がしだいにくふうされてきたものであろう。室町末期に成立した〈立花(たてはな)〉が,中心となる枝が直立する形を正式な形としたのは,供花のなかでも水瓶形の器に挿して供える花の形をその源流としているからでもある。夏の季節をのぞいて,中心になるものは樹の枝で直立し,それに他の花材がそえられてゆく初期の立花は,飾る花とはいいながら聖性をもった一瓶の花とみなされていて,中国の挿花とはちがって依代的な花への神聖観のうかがえるのは特徴といえよう。…

【花】より

… いけばなというと色とりどりの生花をいけるように思われるが,正月の床飾や仏壇の供花(くげ)は常緑樹の枝を中心に花があしらわれる。こういう形の立花(りつか)をもって格式ある〈はな〉とみる感覚は,いまも濃く伝承されている。高野参詣(こうやさんけい)の帰りにはマキ(槙)の枝をいただいてくる。…

【東山文化】より

…将軍家の保護を得た五山にかわり,林下の大徳寺が社会各層の帰依を得て隆盛に向かうのも,応仁・文明の乱前後からで,《狂雲集》を著した一休は,後世にも大きな影響を及ぼした。 さて武家社会では,将軍家を中心に,諸分野にわたる芸能者がこれに近侍奉仕したのが特徴で,猿楽の音阿弥や作庭の善阿弥・小四郎・又四郎3代,同朋衆では唐物奉行に当たった能阿弥芸阿弥相阿弥代,香,茶の千阿弥,立花(たてはな)の立阿弥などの名が知られる。このうち同朋衆は,義持,義教を経て義政の時代に最も活躍するが,とくに唐物同朋は将軍家による唐物収集を担当し,目利(めきき),保管,表装あるいは唐物唐絵をもってする座敷飾に当たった。…

【立花】より

…花道成立以前から行われていた花,草,木を花瓶に〈立てる〉形式から,古くは〈たてはな〉と呼ばれ,室町時代には定式化した。成立当初の〈立花(たてはな)〉の形式と目的は,室内を飾り,それを眺め楽しむということであった。1490年ころになると,花瓶に〈立て〉られる種々の草木のうち,その中心となるものを〈しん〉(心,身,真)と呼び,それに添えるものを〈下草〉と呼んで,それぞれの約則名によって立てられるようになった。…

【立花大全】より

…いけばなのなかの立花の啓蒙的な伝書。《古今立花大全》ともいう。…

【池坊】より

…1462年(寛正3),池坊専慶が金瓶に草花数十枝をたてたのを《碧山日録》は,〈皆その妙を嘆ずる也〉とつたえ,1525年(大永5),池坊専応は《二水記》のなかで,〈池坊六角堂執行花上手也〉と記されている。16世紀の中ごろは,いわゆる天文口伝書の時代であるが,《池坊専応口伝》や《専栄花伝書》がつたえるとおり,いろいろの立花(たてはな)の系統が池坊のなかにまとまってゆく時期であった。桃山時代になると,ほかの流派はほとんどみられず,立花を家業とする池坊の位置は定着した。…

【いけばな】より

…供花を立てる花瓶は水瓶(すいびよう)形で,器ののどの部分が細く口がややひろがっているため,挿した形は花が直立するようになり,器ののどの細い部分につめものをして花を安定させる留め方がしだいにくふうされてきたものであろう。室町末期に成立した〈立花(たてはな)〉が,中心となる枝が直立する形を正式な形としたのは,供花のなかでも水瓶形の器に挿して供える花の形をその源流としているからでもある。夏の季節をのぞいて,中心になるものは樹の枝で直立し,それに他の花材がそえられてゆく初期の立花は,飾る花とはいいながら聖性をもった一瓶の花とみなされていて,中国の挿花とはちがって依代的な花への神聖観のうかがえるのは特徴といえよう。…

【立花大全】より

…いけばなのなかの立花の啓蒙的な伝書。《古今立花大全》ともいう。…

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