生飯(読み)サバ

デジタル大辞泉 「生飯」の意味・読み・例文・類語

さ‐ば【飯】

《「生飯」の唐音さんぱん」からという。「散飯」「三把」「三飯」とも書く》食事のときに自分食物から取り分けた飯粒屋根などに置き、鬼神餓鬼に供え、鳥獣に施すもの。さんば。さんばん。
板屋の上にて烏のときの―食ふ」〈・二五六〉

さん‐ぱん【生飯/散飯】

さば(生飯)」に同じ。

さん‐ば【飯/散飯】

さば(生飯)

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精選版 日本国語大辞典 「生飯」の意味・読み・例文・類語

き‐めし【生飯】

〘名〙 雑穀をまじえないで、米ばかりで炊いた飯。
浄瑠璃傾城酒呑童子(1718)二「飯(まま)は上置(うはおき)なしのきめし也」

いけ‐めし【生飯】

〘名〙 清酒原料の蒸米冷却法の一つ。蒸米を、風に当てないで徐々に冷やすため、莚(むしろ)に包んで、底の浅い桶に入れるか、またさらに上から莚をかけておくこと。また、その飯。

いき‐めし【生飯】

〘名〙 うまくたきあがった飯。〔譬喩尽(1786)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「生飯」の意味・わかりやすい解説

生飯 (さば)

〈さんばん〉ともいい,三飯,散飯,三把とも書く。仏教では衆生の飯米の意で,餓鬼や鬼子母神に供えるため,食膳に向かうときに少量取りわけた飯をいい,屋上や地上に投げ散らす。民俗儀礼としては神や尊者にささげる米や飯のことで,お初穂の意味である。神の前にまいたり供えたりする。関西地方で盆や正月に,健康でいる両親親方塩鯖刺鯖を贈る習俗があるが,目上の人に生飯を贈ることが転じて鯖になった。
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世界大百科事典(旧版)内の生飯の言及

【散米】より

…いずれも散米によって邪悪なものを祓い,神聖な空間を現出しているのであるが,同様のことは《宇津保物語》《栄華物語》《今昔物語集》などにも記されている。米に限らず,節分の豆まきや12月1日の川祭(川浸り)の餅まき,棟上祝の餅まき,寺院の生飯(さば)などのように,食べ物をまく行事が各地にある。これらは散米と同じ意味をもち,その土地にひそむ悪霊や邪悪な魔物に食べ物を供えて供養し,同時に穀物の霊力によってそれらを祓い鎮めようとしたものである。…

【飯】より

…とくに室町時代には湯漬が愛好され,その食べ方の作法が多くの故実書に記されている。また,飯を食べる前にまず少量をとって別の小皿に置く生飯(さば)の風習も,広く行われていた。 欧米では,米飯はふつう野菜料理の一種とされ,付合せに用いられることが多いが,ピラフ,パエーリャ,リゾットなどの炊込飯も行われる。…

※「生飯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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