片寄・偏(読み)かたよる

精選版 日本国語大辞典 「片寄・偏」の意味・読み・例文・類語

かた‐よ・る【片寄・偏】

〘自ラ五(四)〙
中央部分やある標準位置からはずれて一方に寄る。
拾遺(1005‐07頃か)秋・二一三「招くとて立もとまらぬ秋ゆゑにあはれかたよる花すすき哉〈曾禰好忠〉」
② あるもののほうに近づき寄る。身や心を寄せる。
万葉(8C後)一四・三五六五「彼の児ろと寝ずやなりなむはだすすき宇良野(うらの)の山に月可多与留(カタヨル)も」
③ 一方について力を貸す。味方する。
蜻蛉(974頃)中「かずかずに君かたよりてひくなれば柳のまゆも今ぞひらくる」
※打聞集(1134頃)摩等聖弘仏法事「此麼等が方には只大臣一人方よれり」
④ 考えや態度処置などが不均衡、または不公平になる。偏する。
※談義本・銭湯新話(1754)一「律義なる人なれば儒仏神の教、何れにも偏(カタヨラ)ず」
[語誌]②について、上代では、挙例の「万葉‐三五六五」などで確認されるものの、一般には「かたづく」がこの意味を担っていた。しかし、中古には、「かたよる」の例が多く確認できるのに対して「かたづく」はあまり例をみない。中世以降になると、再び「かたづく」が用いられるようになる一方、「かたよる」はこの意味では使われなくなる。

かた‐より【片寄・偏】

〘名〙
① 中央の部分やある標準の位置からはずれて一方に寄ること。あるものに近づき寄ること、また、その度合。古く「に」を伴って、ただ一方によって、ひたすら、の意で副詞的に用いられた。
※万葉(8C後)七・一〇七二「明日の宵照らさむ月夜は片因(かたより)今夜に寄りて夜長からなむ」
② 他に力を貸すこと。助力
名語記(1275)六「農夫等がかたよりにつかはるるをゆいとなづく、如何」
③ 考えや態度、処置などが不均衡、または不公平なこと。
※両足院本山谷抄(1500頃)二「かたよりがしてはかなうまいぞ」

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