漢方的にみた病気と食べものの関係(読み)かんぽうてきにみたびょうきとたべもののかんけい

食の医学館 の解説

かんぽうてきにみたびょうきとたべもののかんけい【漢方的にみた病気と食べものの関係】

《気・血・水の理論で自分の体質を知る》
ストレスに弱い人は「気」の病、冷え症貧血ぎみの人は「血」の病、むくみやすい、のどがかわきやすい人は「水」の病になりやすい。日ごろからそれぞれに合った食品をとり、健康管理をしましょう。
〈気血水の医学とは〉
 漢方では、その人の体質や病気のタイプ、状態のことを「証(しょう)」と呼びます。1人1人の証を見極め、その証に合った治療をすることが漢方の特徴です。証を判断するには、陰陽論(おんみょうろん)、五行論(ごぎょうろん)などいろいろな方法がありますが、もっとも簡素で実用的なのが気血水(きけつすい)の理論です。
 気血水の気とは、広義にはエネルギー狭義には精神的なものをさします。広義の気は、「元気がある」「生気がある」といった言い方に表されるように、生命エネルギー全体のことです。
 この広義の気の下に、狭義の気と血(血液の流れ)と水(体の水分の流れ)があります。これら気・血・水のバランスがうまくとれている状態が健康、バランスがくずれている状態が病気です。
〈気の病気にはシソが効果的〉
 精神的なものを表す狭義の気は、日常生活のストレスによってバランスをくずしやすくなります。気が減退すると「気虚(ききょ)」という状態が起こり、疲れやすく、かぜをひきやすくなります。
 また、健康ならば体の中でスムーズにめぐっている気の循環が障害されると「気うつ」の状態となり、精神不安が起こります。
 さらに、気が逆流して上昇すると「気逆(きぎゃく)」となり、めまいや不眠症、頭痛、目の充血、抜け毛、肩こりなどの症状がでてきます。
 また、気のバランスがくずれることによって、呼吸器系の疾患がある場合には悪化し、心臓にも悪影響をおよぼします。内臓では胃、肝臓、腎臓(じんぞう)、膀胱(ぼうこう)などの疾患を引き起こす原因となります。
 こうした気の病気には、気を補う食品が効果的です。なかでも、代表的なのがシソで、精神を安定させる働きがあります。
 神経衰弱(しんけいすいじゃく)ぎみの人はユリ根が効きます。不眠症にはナツメやクリ、心臓が弱っていて眠れない場合には豚の心臓を料理して食べるといいでしょう。
 神経症や高血圧には、緑茶や中国茶、菊花がよく、ハスの実や根も神経をやわらげる効果があります。
 腎臓が弱ると神経過敏になりやすいので、腎臓によい豆類も食べるようにしましょう。ダイズ、なかでも黒豆がとくに効きます。
〈血の病気にはハス、ヨモギ、キンシンサイを〉
 血(けつ)とは、人間の体における血液の流れです。血液の流れがうまくいかなくなり、汚れてくることを「瘀血(おけつ)」といい、女性に多くみられます。
 頭に血がのぼりやすく、のぼせやすい人、冷え症の人は瘀血の体質で、脳卒中(のうそっちゅう)などを起こしやすい傾向があります。
 また、めまい、頭痛、肩こり、痔(じ)、顔や手足にシミが多くなる、唇がどす黒くなる、湿疹(しっしん)や吹き出ものができる、女性では生理不順などの症状も瘀血の特徴です。
 血液を解毒する臓器である肝臓も瘀血の影響を大きく受けます。血の汚れがひどくなると、肝臓のはたらきが弱まり、皮膚にできものや湿疹となって現れます。
 瘀血とは別に、血が足りなかったり、血の栄養が悪い、いわゆる貧血の状態を漢方では「血虚(けつきょ)」と呼んでいます。血虚になると、皮膚が乾燥する、顔色が悪い、目がかすむ、手足がしびれる、抜け毛などの症状がでてきます。
 瘀血や血虚には、ハスを粉にしたもの、はちみつ、ローヤルゼリー、ゴマ、シイタケ、ダイズなどがいいでしょう。ヨモギベニバナサフランのお茶も有効です。
 婦人科系の疾患があるときは、干しブドウ、ナツメ、プルーンホウレンソウヒラマメ、ササゲ、ニンニク、ハスの実を食べてください。出血が止まらないときは、キクラゲ、クルミ、セリが効果的です。
 重い貧血には、キンシンサイがよく効きます。産後のむくみや貧血にはリュウガン、痔(じ)による出血にはキンシンサイ、ニラ、キクラゲ、イチジクがおすすめです。
〈水の病気にはアズキなど〉
 人間の体の65%は水分だといわれます。この水分の代謝が悪い状態を「水毒(すいどく)」といい、むくみが起こります。
 このタイプの人の特徴は、湿気が強くなると体が重く感じられることで、のどがかわきやすく、水を飲むわりに尿の出が悪いケースも多くみられます。
 水毒によって起こる病気には、腎炎(じんえん)、ネフローゼ症候群、膀胱結石(ぼうこうけっせき)など、腎臓と尿路の疾患があります。
 むくみがでたときに、水の代謝をうながす代表的な食品はアズキです。クワの実、トウモロコシの毛、ショウガの皮、コイにも同様の働きがあります。
 のどのかわきにはアンズ、ハトムギを、尿の出が悪いときはセリ、緑茶・中国茶、ドクダミ、キササゲを、頻尿(ひんにょう)や夜尿症(やにょうしょう)にはギンナンを食べると効果的です。
 また、尿路結石にはクルミ、血尿(けつにょう)には干し柿、セリ、そして腎臓が原因で起こる腰痛にはナタマメや豚の腎臓が効きます。
 自分の体質や病状が気、血、水のいずれによるものかを知り、日常の食事や健康管理の参考にするといいでしょう。

出典 小学館食の医学館について 情報

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