ヒラマメ(英語表記)lentil
Lens culinaris Medik.(=L. esculenta Moench.)

改訂新版 世界大百科事典 「ヒラマメ」の意味・わかりやすい解説

ヒラマメ
lentil
Lens culinaris Medik.(=L. esculenta Moench.)

種子食用にするため栽培されるマメ科の一年草。高さ20~80cmになる比較的小型の植物で,全体に柔らかい毛がはえる。狭楕円形の10枚ほどの小葉が偶数羽状複葉をなし,頂小葉は通常短い巻きひげになる。腋生(えきせい)する花序に1~4個の花をつける。花は白,赤あるいは青紫色で,豆果は小さく長さ1.5~2cmほど,中に扁平円形で凸レンズ状の2個の種子(豆)がはいっている。この形からレンズマメともいう。若莢(さや)は野菜に,豆はもっぱら製粉されスープなどにして食用にされる。栽培は古く,古代エジプトですでに利用され,石器時代までさかのぼる。地中海東岸域から西アジアに野生するL.orientalis (Boiss) Hand.-Maz.から,農耕が開始された新石器時代に栽培化されたものと考えられる。排水のよい土壌を好み,乾燥には強い。ヨーロッパ南部,地中海沿岸で多く栽培されていて,秋まき品種群と春まき品種群が分化している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラマメ」の意味・わかりやすい解説

ヒラマメ
ひらまめ / 扁豆
兵豆
[学] Lens culinaris Medik.
Lens esculenta Moench

マメ科(APG分類:マメ科)の一、二年草。豆を食用や飼料とするために栽培される。茎は細く、立ち上がり、多くの枝を出す。草丈は50センチメートルほど。葉は4~7対の小葉が対生する羽状複葉で、葉先はつる状になる。葉腋(ようえき)から長い花柄を出し、2~4個の花を開く。自家受精し、花期後、莢(さや)は長さ1~3センチメートルに伸び、中には凸レンズ状の平たい種子が1~2個ある。このため別名ヘントウ、レンズマメともいう。大粒種と小粒種とがあり、大粒種は種子の直径6~9ミリメートル、花は白色、まれに青色で、地中海沿岸やアフリカ、小アジアに分布する。小粒種は種子の直径3~6ミリメートルで花は紫青色や白色、また淡紅色のものもあり、西南アジアから西アジアに分布する。原産地は西アジア。現在ではおもにインドやトルコシリアなどで栽培される。豆をひき割りや製粉し、スープにしたり、穀物の粉と混ぜて焼いて食べる。また炒(い)ってコーヒーの代用とする。全草は上質な飼料ともなる。若い葉や莢をインドでは野菜とする。

[星川清親 2019年11月20日]


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世界大百科事典(旧版)内のヒラマメの言及

【レンズ】より

…前者には光を集める性質,後者には発散させる性質がある。
【歴史】
 レンズの語源は人類最古の栽培植物の一つであるヒラマメ(レンズマメともいう。ラテン名lens)に由来する。…

※「ヒラマメ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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