準禁治産者(読み)ジュンキンチサンシャ

デジタル大辞泉 「準禁治産者」の意味・読み・例文・類語

じゅんきんちさん‐しゃ【準禁治産者】

心神耗弱しんしんこうじゃく者および浪費者で、家庭裁判所から準禁治産宣告を受けた者。平成12年(2000)の準禁治産制度廃止、成年後見制度への移行により、浪費者が対象から外れて名称被保佐人となった。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「準禁治産者」の意味・読み・例文・類語

じゅん‐きんちさんしゃ【準禁治産者】

〘名〙 心神耗弱(こうじゃく)者または浪費者などで、家庭裁判所から準禁治産の宣告を受けた者をいった。平成一一年(一九九九改正、同一二年施行の民法により、被保佐人と改められた。〔民法(明治二九年)(1896)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「準禁治産者」の意味・わかりやすい解説

準禁治産者 (じゅんきんちさんしゃ)

心神耗弱(こうじやく),浪費癖のため,一定の者からの請求によって,家庭裁判所から準禁治産の宣告を受けた者(民法11条,13条,家事審判法9条1項甲類2号など)。かつては,聾者,啞者および盲者も準禁治産者とされうることになっていたが,1979年の民法の一部改正で削除された。それは,単に聾者,啞者,盲者であるというだけで当然に準禁治産が宣告されるかのような誤解世間一般に生じ,その結果これらの者が社会生活上で不利益を受けるおそれがあったこと,および,これらの者をことさらに法文中に掲げておかなくても,〈心神耗弱者概念の弾力的運用で十分に対応できると予測され得たこと,という二つの理由による。元来,この準禁治産の制度はフランス民法上の裁判上の保佐制度(conseil judiciaire,フランス民法旧499条,旧513~515条)を基本的には踏襲したもので,日本民法上の3種の無能力者のなかで行為能力の制限の最も弱い類型であり,日常身辺の普通の事柄を処理するのに必要な能力は,準禁治産者自身に完全に留保されている。そのうえで,これを超えて準禁治産者の財産関係に重大な影響を及ぼす可能性のある諸行為(たとえば,元本領収・利用,不動産または重要な動産に関する取引,借財・保証,相続の承認放棄新築増改築・大修繕など,民法12条1項に列挙されているもの,および,家庭裁判所がこれらと同視されるべきことをとくに宣告したもの(同2項))についても,これを行うに際して保佐人の同意を得ることが必要とされるだけである。単に心神耗弱または浪費癖があるというだけだから,未成年者・禁治産者とちがって,相手方からの意思表示を受領したり(民法98条),相手方の提起した訴えまたは上訴についてなら訴訟行為をする程度のことはできる(民事訴訟法32条1項)。公務員になれない点は禁治産者と同じだが(国家公務員法38条など),禁治産者とちがって公職の選挙権・被選挙権は認められている(公職選挙法11条1項)。
禁治産者
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「準禁治産者」の意味・わかりやすい解説

準禁治産者【じゅんきんちさんしゃ】

民法11条以下に定められた制度であるが,1999年12月の改正により(2000年4月施行),成年後見制度が導入され,準禁治産者は〈被保佐人〉と改称された。旧法では心神耗弱(こうじゃく),浪費癖等のために,家庭裁判所から準禁治産の宣告を受けた者とされていたが,改正法では〈精神上の障害に因り事理を弁識する能力が著しく不十分なる者〉とし,準禁治産の宣告は〈保佐開始の審判〉と改められた。→保佐人
→関連項目禁治産者精神鑑定補助無能力者

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「準禁治産者」の意味・わかりやすい解説

準禁治産者
じゅんきんちさんしゃ

心神耗弱者(心神喪失ほどではないが正常な判断能力を欠く者)または浪費癖のある者で,一定の手続きに従い家庭裁判所で準禁治産の宣告を受けた者。1999年の民法改正までの制限行為能力者の一種(→行為能力)。改正により準禁治産者という呼称は廃止され,判断能力の欠如の程度に応じて被保佐人(→保佐)と被補助人(→補助)に分類されることになった(→成年後見制度)。また,浪費者については以前から,行為能力を制限することに批判が多かったことから,同改正により,保佐の対象としないことになった。(→禁治産者

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「準禁治産者」の意味・わかりやすい解説

準禁治産者
じゅんきんちさんしゃ

成年後見制度における「被保佐人」にあたる立場をさす旧称。同制度導入前に設けられていた禁治産・準禁治産宣告制度における「準禁治産者」は、心神耗弱(こうじゃく)者(精神障害の程度が心神喪失まで至らず、不完全ながら判断能力を有する者)または浪費者(前後の見境なく財産を浪費してしまう癖のある者)とされた。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の準禁治産者の言及

【訴訟能力】より

…訴訟無能力者は,訴訟において必ず法定代理人によって代理されなければならない。準禁治産者は制限的訴訟能力者である。すなわち準禁治産者はみずから訴訟行為をすることができるが,そのためには,保佐人の同意を必要とする(民事訴訟法28条,民法12条1項4号)。…

※「準禁治産者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」