無能力者(読み)ムノウリョクシャ

デジタル大辞泉 「無能力者」の意味・読み・例文・類語

むのうりょく‐しゃ【無能力者】

能力のない者。何もできない人。
民法上、単独では完全な法律行為のできない者。未成年者禁治産者準禁治産者をいった。平成12年(2000)民法の改正により、制限行為能力者に改められた。

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精選版 日本国語大辞典 「無能力者」の意味・読み・例文・類語

むのうりょく‐しゃ【無能力者】

〘名〙
物事をなす能力のない人。無能者。
※嚼氷冷語(1899)〈内田魯庵〉「近来文学は衰頽の極に達し所謂文学者は成存の権すらなき無能力者(ムノウリョクシャ)となった」
② 民法上、単独で完全な法律行為をすることのできない者。未成年者・成年被後見人被保佐人がこれにあたり、民法は、親権者後見人保佐人をつけて保護している。以前は妻も無能力者とされていたが、昭和二二年(一九四七)の改正で能力者とされた。行為無能力者。〔仏和法律字彙(1886)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「無能力者」の意味・わかりやすい解説

無能力者 (むのうりょくしゃ)

日本民法上で単に〈無能力者〉というときは行為能力のない者をさし例外として,民法714条には〈責任無能力者〉についての規定がある),未成年者禁治産者準禁治産者の3者を含む。第2次大戦後に民法が改正されるまでは,家族秩序維持のため妻も無能力者とされていたが,これは両性の本質的平等に反するので廃止された。そこで今日では,この制度の目的が,継続して意思能力の不完全なものを財産取引上で保護する点にのみあることが明確になっている。このように,無能力者本人の保護がその目的だから,無能力者が他人代理人として行為することには,すなわち,その行為の効果がすべて代理される者に帰属し,代理人となった無能力者には不利益の及ぶ可能性が全くない形で行為することには,なんの支障もないのが原則である(102条)。ただし,代理のなかでも法定代理法定代理人)においては,代理される者が代理人を選択できないから,代理される者を保護するための特別規定,たとえば無能力者は後見人になれないという規定(846条など)が存在することも少なくない。また,意思能力が継続して不完全であることに基づき,他人からの高度信頼前提とする法的地位に立つことの資格,たとえば遺言の証人・立会人,あるいは公証人になること,を否定されることもありうる(974条,公証人法12条1項1号,14条3号など)。
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百科事典マイペディア 「無能力者」の意味・わかりやすい解説

無能力者【むのうりょくしゃ】

単独で完全な法律行為をなし得ない者。行為無能力者とも。1999年の法改正により,民法上は〈制限能力者〉という用語に改められた。民法は未成年者禁治産者準禁治産者(1999年の法改正により,後の2者は成年被後見人,被保佐人と改称)を制限能力者とする。意思能力の不十分な者が不利益な行為によって損失を受けないように保護するために設けられた。制限能力者が単独でした法律行為は原則として取り消すことができ,意思能力もない場合には無効となる(民法4条以下)。制限能力者には保護の機関(親権者,後見人保佐人)がつけられる。なお,訴訟法上は,〈無能力者〉は訴訟行為を行う能力がない者をさし,民事訴訟法上の行為能力は民法上の行為能力に準拠しており,また刑事訴訟法上は意思能力がない者をいう。
→関連項目制限能力者

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無能力者」の意味・わかりやすい解説

無能力者
むのうりょくしゃ

1999年(平成11)の民法改正(2000年4月1日施行)で導入された制限能力者制度(成年後見制度)の前に設けられていた行為無能力者制度(禁治産・準禁治産制度)の下で、単独で完全な法律行為をなしえない者をさす。新制度導入に伴い、差別的な印象を与えるとして「制限能力者」に改められ、さらに2004年には「制限行為能力者」に改められた。

[淡路剛久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無能力者」の意味・わかりやすい解説

無能力者
むのうりょくしゃ

行為能力」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の無能力者の言及

【商人】より

…小商人はあまりに小規模な商人であるため,商業登記(商業登記を前提とする支配人の制度も同様),商号および商業帳簿に関する規定は適用されない。自然人は無制限の権利能力を有するので,無能力者(未成年者,準禁治産者,禁治産者)をも含めてだれでも商人となる資格がある。もっとも,無能力者はみずから営業活動をする能力(営業能力)は制限されている。…

※「無能力者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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