渉外訴訟(読み)しょうがいそしょう

改訂新版 世界大百科事典 「渉外訴訟」の意味・わかりやすい解説

渉外訴訟 (しょうがいそしょう)

最も広義には一つでも渉外(国際)的要素を含む訴訟をいう。この意味での訴訟の渉外性は,たとえば原告被告一方または双方が外国人であったり,外国に住所を有していたりすることや,訴訟上争われる法律関係が,外国の社会と密接な関係を有することによってもたらされる。渉外訴訟といえば通常は国際的な民事訴訟をさし,そこでは一体どこの国の法律を適用すべきか(国際私法学が問題とする準拠法の選択)の点や外国でなされた判決の承認(外国判決)などが問題となる。刑事法や行政法の領域においてこれらの点をどう考えてゆくかは今後の問題であり,当面自国裁判所における自国法の適用による処理のみが考えられている。その場合,独占禁止法や租税法に関してアメリカで最も顕著に見られる傾向として,広く外国の会社等に対しても自国のこれらの法規を適用しようとすること(域外適用)がなされる。けれども,国家管轄権の行使には一般国際法上一定の限界があるはずであり,その限界の画定をめぐり各国で激しい議論がなされている。民事事件の管轄については,かかる一般国際法上の制限はないとされるが,自国との関連性の強弱や被告の応訴上の困難さなどを種々勘案しつつ,国際民事訴訟法がこの点を適切に規律することになる。渉外訴訟の処理に際しては海外での文書送達証拠調べなどについての各国の協力国際司法共助)が場合によって必要となり,そのための国際的なルール作成の努力が,従来よりなされてきている。
国際私法 →裁判管轄
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