海洋工学(読み)かいようこうがく(英語表記)oceanographic engineering

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「海洋工学」の意味・わかりやすい解説

海洋工学
かいようこうがく
oceanographic engineering

海洋のもつエネルギーや資源を開発する技術の研究分野。エネルギー開発としては,海流潮汐海面海底の温度差などを利用する発電が主であるが,イオン交換や透析により海水の塩分濃度差をつくり,その間の化学エネルギー利用も考えられている。資源利用の面では,いままでは主として海水中に溶解する無機質の採取で,食塩苦汁 (にがり) は古くからあり,特に後者はマグネシウム製錬原料として重要である。現在注目されているのは原子核燃料物質となるトリウムウランで,地表上のこれらの元素は海水中に最も多く,その工業的採取が考えられる。また溶解分だけでなく,太平洋海溝部 (深さ 4000~6000m以上) に豊富なマンガン団塊の存在が確認されているので,その採取も重要な課題である。その他海中油田も重要で,ペルシア湾北海ではすでに一部開発に着手され,東シナ海も注目されている。しかし海中,特に深海底などの特殊環境では,特別な機械器具や装置が必要になるので,各国間で競争的に研究が進められつつある。また近年では,工業の発展や人口の急増などによる海洋汚染の問題が出現し,海洋環境問題が人々の意識にのぼるようになった。全般的にはまだ未成熟の工学分野であるだけに,将来進歩が期待される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海洋工学」の意味・わかりやすい解説

海洋工学
かいようこうがく
ocean engineering

海洋、とくに海洋開発に関連する工学の総称。最近はオーシャニクスoceanicsという用語も使われている。海洋工学の分野は大別して、(1)海洋資源開発の工学的技術、(2)海洋資源開発の機器関連技術、(3)海上、海中における一般的な科学、工学的技術、とされるが、もちろんこの間にはっきりした区別境界はない。具体的には、(1)に潮汐(ちょうせき)・波力発電、(2)に海底油田掘削装置、海上作業台、(3)に海底テレビ撮影装置などが該当するであろう。陸上と異なり、海上、海中、海底という特殊な環境下では、いままでの陸上対象の電気、機械、電子工学などと大きく違ったものが要求される。とくに海洋物理学海洋気象学海洋化学、海洋生物学などの海洋科学の情報知見に裏打ちされたものでなければならない。近年の深海からの石油採掘の諸要求は、海洋工学の進歩、発展に大きな契機となり、原動力ともなっている。

[半澤正男]

『『海洋工学ハンドブック』(1975・コロナ社)』

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