苦汁(読み)くじゅう(英語表記)bittern

翻訳|bittern

精選版 日本国語大辞典 「苦汁」の意味・読み・例文・類語

く‐じゅう ‥ジフ【苦汁】

〘名〙
① にがい汁。
② (転じて) にがい経験。くるしみ。
※日本文化論のあり方(1956)〈桑原武夫〉「戦争の苦汁(クジュウ)を毛穴のすべてから感じとった」
海水を煮つめて製塩した後に残る母液にがり

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デジタル大辞泉 「苦汁」の意味・読み・例文・類語

く‐じゅう〔‐ジフ〕【苦汁】

にがい汁。
つらい経験。「苦汁を飲まされる」
[類語](2経験体験見聞洗礼苦杯見聞き耳目追体験遍歴場数を踏む

にがり【苦汁/滷汁】

海水から食塩析出させたあとの残液。苦みがあり、主成分塩化マグネシウム豆腐凝固剤などに使用苦塩にがしお。くじゅう。

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改訂新版 世界大百科事典 「苦汁」の意味・わかりやすい解説

苦汁 (にがり)
bittern

海水または鹹水かんすい)を濃縮して塩を採取した残りの比重1.3程度の粘稠(ねんちゆう)な溶液。主成分は塩化マグネシウムで,独特な刺激のある苦みを有する。にがりは豆腐の凝固剤として古くから使用され,安政(1854-60)のころからボウ硝硫酸ナトリウムの10水塩)の製造も行われてきた。しかし,にがり工業と名付けられる形態を整えたのは,明治の末ごろで,まず炭酸マグネシウムの製造が始まった。続いて第1次世界大戦後のカリ塩欠乏により1915年ごろからカリの採取が始まった。また32年ごろから金属マグネシウムの製造が実用化されるとその原料となり,第2次世界大戦中では,臭素,金属マグネシウム,塩化カリは重要物質として統制をうけた。さらに,1944-52年の間は,にがりの専売制が施行された。その後塩業の合理化により,かなり多量のにがりが総合処理できるようになり,一時は,カルシウム塩(セッコウ塩化カルシウム),マグネシウム塩(水酸化マグネシウム,マグネシア,炭酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,塩化マグネシウム,金属マグネシウム),カリウム塩(苦汁(くじゆう)カリ塩,カーナライト,塩化カリウム)および臭素が採取された。72年に日本の塩業が塩田法から全面的にイオン交換膜法に転換したが,これにともない,副生するにがり量も,塩1t当り塩田法の500lからイオン交換膜法の200lに減少した。しかし,製塩工場は年産17万tと大規模化し,1工場当りにがりの生産量も3万~4万klと増大した。また,にがりの組成も,塩田法では硫酸イオンが多かったが,イオン交換膜法ではその選択透過性のためカルシウムイオンが多くなるというように変わってきている(表)。現在では,他の資源と競合する関係で,主として臭素とマグネシウム塩類とが利用されているにすぎない。
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