江南の橘江北に移されて枳となる(読み)こうなんのたちばなこうほくにうつされてからたちとなる

精選版 日本国語大辞典 の解説

こうなん【江南】 の 橘(たちばな・きつ)江北(こうほく)に移(うつ)されて枳(からたち・き)となる

(「韓詩外伝」「説苑」「晏子春秋」など諸書に見える中国のことわざで、揚子江南方に産する橘を、江北に移植すれば枳になるの意) 所や状況によって、人の性質も変化するということのたとえ。
太平記(14C後)八「源は同流也といへども、江南(カウナン)の橘(タチバナ)、江北(カウホク)に被(ウツサレ)て枳(カラタチ)と成(ナル)習也」 〔韓詩外伝‐巻一〇〕

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故事成語を知る辞典 の解説

江南の橘江北に移されて枳となる

場所や状況によって、同じ人間でも性質が変化することのたとえ。

[使用例] 江南の橘江北に移されて枳となると云うが、音に聞えた才子徳行家の笠松君が一里離れた自宅から伯父の宅へ来ての変り様を見れば、成程虚言うそでもあるまいかと思われる[徳冨蘆花*思出の記|1900~01]

[由来] 「韓詩外伝―一〇」に見える逸話から。紀元前六世紀、春秋時代の中国で、せいという国の大臣、あんえいの国を使節として訪問したときのこと。楚の国の人々は、「斉から来た男が楚で盗みを働いた」と、晏嬰難癖を付けてきました。すると晏嬰は、「あの『江南(長江の南、楚の国がある地域)』に生える木をご存じないですか。『橘(タチバナ)』という名前の木ですが、『江北』に植えると、『化して枳とる(性質が変わってカラタチになる)』のです。その男も、楚に来て盗みを覚えたのでしょう」と答えて、楚の国の雰囲気に悪影響を受けたのだ、と反論したのでした。ちなみに、実際には「橘」と「枳」は別の植物ですが、当時はこのように信じられていました。

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