暴行罪(読み)ボウコウザイ

デジタル大辞泉 「暴行罪」の意味・読み・例文・類語

ぼうこう‐ざい〔ボウカウ‐〕【暴行罪】

人の身体に、傷害に達しない程度の物理的な暴力を加える罪。刑法第208条が禁じ、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料に処せられる。→傷害罪

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精選版 日本国語大辞典 「暴行罪」の意味・読み・例文・類語

ぼうこう‐ざい ボウカウ‥【暴行罪】

〘名〙 他人の身体に暴行を加えたが、傷害するまでに至らなかったときに成立する罪。

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改訂新版 世界大百科事典 「暴行罪」の意味・わかりやすい解説

暴行罪 (ぼうこうざい)

暴行を加えたが相手が傷害しなかったときは,2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金,拘留または科料に処せられる(刑法208条)。暴行とは,人の身体に加えられる物理力の行使をいう。たとえば身体の近くで大太鼓などを連打するのも,暴行である。これに対して,たとえば相手に催眠術をかけるような,言葉の意味を通じて相手に攻撃を加えることは,暴行ではない。暴行によって被害者が傷害したときは,暴行罪ではなく傷害罪になる(204条)。反対に,相手を傷害するつもりで暴行を加えても,傷害の結果を生じなかったときは,暴行罪である。判例は,投げつけられた石が身体の近くを通った場合とか,狭い室内で日本刀を振りまわすことも,暴行であるとしている。なお,〈暴力行為等処罰ニ関スル法律〉(暴力行為等処罰法)では,集団暴行などについてかなり重い罰則が設けられている。新聞用語では,強姦罪のことを(婦女)暴行罪と呼ぶこともあるが,これは正確な表現ではない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「暴行罪」の意味・わかりやすい解説

暴行罪
ぼうこうざい

暴行を加えた者が、人を傷害するに至らない場合をいい、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処せられる(刑法208条)。刑法上の「暴行」の概念には広義狭義等4種類あるが、本罪の「暴行」は、人の身体に向けられた有形力(物理力)の行使をいう(狭義の暴行)。本罪の「暴行」は、単に人に対して有形力を行使するだけでは足りないが、かならずしも人の身体に接触することを要しない。したがって、判例によれは、人の足元に投石したり、四畳半の部屋で日本刀の抜き身を振り回す行為もこの暴行にあたりうる。また、暴行の手段である有形力には、強い光線、放射能なども含まれるが、判例によれば、「騒音による暴行」を認め、身辺で大太鼓や鉦(かね)などを連打する行為も本罪にあたる、と解している。暴行罪の故意につき、暴行の意思で暴行した場合がこれにあたることはいうまでもないが、傷害の意思で暴行に出たが、被害者を傷害するに至らなかった場合は、本来、傷害未遂になるが、現行法上傷害未遂罪の規定がないため、刑法第208条により暴行罪として処理される。

[名和鐵郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「暴行罪」の意味・わかりやすい解説

暴行罪
ぼうこうざい

他人の身体に対し有形力を行使し,傷害するにはいたらないときに成立する罪 (刑法 208) 。暴行は人の身体に物理的な力を加えることであり,その結果,普通は心理的または肉体的に苦痛をもたらす。したがって,なぐる,蹴るといった場合だけでなく,催眠術を施したり,長時間耳もとで異常な騒音を立てることも暴行になる。面前刃物を振回す行為なども含まれる。暴行の故意のある場合のほか傷害罪の未遂も本罪となる。逆に暴行の意思で暴行を加え,結果として人を傷害するにいたれば傷害罪となり,死亡させれば傷害致死罪となる。

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百科事典マイペディア 「暴行罪」の意味・わかりやすい解説

暴行罪【ぼうこうざい】

他人に暴行を加えたが傷害に至らない行為で,刑は2年以下の懲役,もしくは30万円以下の罰金または拘留・科料(刑法208条)。暴行とは人の身体に対する物理的な力の行使を意味し,痰(たん)を吐きかけること,催眠術を施すこと等も含む。傷害の結果を生じたときは傷害罪となる。刑法のほか暴力行為等処罰法がある。

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