方式書訴訟(読み)ほうしきしょそしょう(英語表記)iudicium per formulas

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「方式書訴訟」の意味・わかりやすい解説

方式書訴訟
ほうしきしょそしょう
iudicium per formulas

前3世紀カルタゴに対する覇権確立によりローマが一大世界商業帝国となるに及んで,属人法主義をとる旧来市民法では保護できない外国人相互間およびローマ市民と外国人との間の争訟の解決にあたり,法律訴訟において特定の式語や動作によって決定された争点を,文書の形に要約することを認めた訴訟制度。この文書を方式書という。方式書とは,いかなる審判人が,いかなる争点について,いかなる基準に基づいて判決を下すべきかについて,法務官またはその他の政務官が審判人に対し与えた指示を内容とする,いわゆる審判手続の指図書である。訴訟の構造は法律訴訟と同じく,法廷手続と審判手続の2つの段階から構成された。法務官は方式書を多目的に利用し,方式書にごく短い数語を挿入するなどの方法で,訴訟を通じて激動の「社会の新しい情況に適応しうる法」「時代に迅速に即応しうる法」を発展させ,ここに法務官法とか万民法といわれる法体系が創造されていった。

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世界大百科事典(旧版)内の方式書訴訟の言及

【裁判】より

…古い法律訴訟における法廷手続は,厳格な方式のもとに両当事者の形式的な意思表示と象徴的な動作により行われ,また,その判決は,原告が自力により目的物を取得することあるいは債務者たる被告を拿捕することにより実行された。法律訴訟においては,わずかな形式の違背も敗訴の原因となり,さらに,その利はローマ人が法律により認められた請求を要求する場合に限られていたので,その後の社会経済の進展に対応するため,前2世紀ころ新しく方式書訴訟が導入された。 方式書訴訟では法務官の命令権に基づき,通常ある条件が具備する場合には有責判決を下し,そうでない場合は免訴すべきことを記した方式書が争点決定の際に作成され,また,判決はすべて金銭判決で行われ,その不履行の場合はさらに判決履行請求訴訟を経て最終的には被告の総財産の売却に至る破産手続が行われた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」