斯て(読み)かくて

精選版 日本国語大辞典 「斯て」の意味・読み・例文・類語

かく‐て【斯て】

[1] 〘副〙 (副詞「かく」に助詞「て」の付いてできたもの)
① 「かく(斯)①」に状態意義を加えて接続する。こうこうで。これこれで。
蜻蛉(974頃)中「文にて『かくてなん』とあるに、『はたよかなり、〈略〉』とあれば、いとこころやすし」
② 「かく(斯)②」に状態の意義を加えて接続する。このような状態で。このようにして。かくして。
万葉(8C後)四・七三四「吾が思ひ如此而(かくて)あらずは玉にもが真(まこと)も妹が手に巻かれむを」
徒然草(1331頃)一八四「今日ばかりは、わざとかくてあるべきなり」
[2] 〘接続〙 先行事柄を受けつつ、新たに事柄を説き起こすことを示す。このようにして。さて。かくして。
※竹取(9C末‐10C初)「こがねある竹を見つくる事重なりぬ。かくて翁やうやう豊かに成り行く」
※高野本平家(13C前)一「ひとへに後世をぞ願ひける。かくて春過ぎ夏闌(たけ)ぬ」

こう‐て かう‥【斯て】

[1] 〘副〙 (副詞「かくて」の変化した語)
事態を観念的、限定的にとらえ、状態の意義を加えて接続する。こうこうで。これこれで。
※蜻蛉(974頃)下「その廿五六日に、ものいみなり。なりはつる夜しも、門のをとすれば『かうてなん、かたうさしたる』とものすれば」
② =かくて(斯)(一)②
※竹取(9C末‐10C初)「翁のあらん限りは、かうてもいますかりなむかし」
[2] 〘接続〙 (接続詞「かくて」の変化した語) =かくて(斯)(二)
源氏(1001‐14頃)行幸「かうてのにおはしましつきて御こしとどめ」

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