撮・摘・抓(読み)つまみ

精選版 日本国語大辞典 「撮・摘・抓」の意味・読み・例文・類語

つまみ【撮・摘・抓】

〘名〙 (動詞「つまむ(撮)」の連用形の名詞化)
① 物をつまむこと。また、そのつまんだ量。
※古活字本毛詩抄(17C前)一五「都人が謙約な程に容美ななりをばせぬぞ。一つまみ程の頭巾をちょっときているぞ」
② つまんで持つのに適するように作られた、物の手の部分。とって。つまみて。
宗湛日記‐天正一四年(1586)一二月一七日「上のつまみ六ようの花也」
③ 酒に添えて出す、手でつまんで食べられるような簡単な酒のさかな。おつまみ。つまみもの。
※俳諧・寛永十三年熱田万句(1636)一三「先おさかなに出すしまゑび あらたまの年のはじめのつまみにて」
④ 江戸時代、奉行自身が出席して裁判を行なう直糺(じきただし)の場合に、尋問にあたり参考にした書付。あらかじめ留役などが作成しておき、奉行はこれによって発言した。尋書(たずねがき)
随筆・寒檠璅綴(1880頃)四「下吏甲乙の言分を瞥見して分晰すべきごとく、筆を舞して書て奉行にとらすをつまみと唱、又目六などともいふ」
甲冑に付属する籠手(こて)の部分の名。
⑥ 工具の一つ。鋏(やっとこ)別名
賭博(とばく)の三笠付の一種。一枚一字の二一枚の札をふせて七列三行に並べ、その一行三文字を三文字だけで言いあてるもの。
※博奕仕方風聞書(1839頃か)「三字組合壱句をつまみと唱」
⑧ 「つまみな(撮菜)」の略。
※大坂繁花風土記(1814)京大坂言葉違ひ「つまみを、間びき」
仲間サクラと話をしながら、群集の購買心をそそって万年筆などを売るてきやをいう、てきや仲間の隠語
※わが新開地(1922)〈村島帰之〉六「又ツマミといふものがある。〈略〉天プラの指輪を売付けたりする者もある」

つま・む【撮・摘・抓】

〘他マ五(四)〙
① 小さい物などを指先などではさみ取る。指先などではさみ持つ。〔法華経音訓(1386)〕
人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初「ちょっぴり生姜といきやせうかねと生姜をつまんで出す」
② 取って食べる。
蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉三「幕の内を摘まむあひだも気が気でなかった」
要点を取り出す。要旨をまとめる。また、簡潔にする。簡単にする。つづめとる。摘要する。かいつまむ。
※杜詩続翠抄(1439頃)一〇「此詩代宗時作而粛宗の事をちっちとつまうて申た」
④ 一時の慰みに女に手をつける。また、男女が他人にかくれて情交する。
※雑俳・青木賊(1784)「つまみけり・給銀の外出す旦那」
⑤ すきなように人をなぶる。愚弄する。また、人をあざける。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑥ (多く「つままれる」と受身の形で用いて) きつねやたぬきなどにばかされる。また、人にだまされる。
浄瑠璃・仏御前扇車(1722)四「此つまみ菜につままれた、揃へる程屑ばかり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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