掬・抄(読み)すくう

精選版 日本国語大辞典 「掬・抄」の意味・読み・例文・類語

すく・う すくふ【掬・抄】

〘他ワ五(ハ四)〙
液状や粉末状のものを、手・匙(さじ)柄杓(ひしゃく)・網などで上へかすめるようにして取り出す。また、液状の物の中から物を取り上げる。くみあげる。しゃくる。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
古本説話集(1130頃か)二五「なべに煮ける物をすくひくひけるほどに」
② 物を上へ持ち上げる。下から上へ急に持ち上げる。かきすくう。
曾我物語(南北朝頃)八「乗りたる馬を主共に中にすくうて投げ上げ」
③ かいくる。繰る。
源平盛衰記(14C前)一五「馬の足のとづかん程は、手綱をすくうて歩ませよ」
④ 横にはらう。かきさらう。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉一三「横さまに払ふ風強くて、足をすくはるるも尠(すくな)からず」
⑤ 米相場師仲間で、米の転売、買戻しによって、わずかな利益を得る。また、すべてもうけとなることもいう。
洒落本・北華通情(1794)「すくふて足とせざるは天神金毘羅の朝参りにみへたり」

すくい すくひ【掬・抄】

〘名〙 (動詞「すくう(掬)」の連用形の名詞化)
① すくうこと。すくいとること。また、そのもの。数詞の下について、「ひとすくい」などのように、すくう回数を表わすのにも用いる。
※御伽草子・諏訪の本地(神道物語集所収)(室町末)「水三すくひまいりまいりして行給へ」
② 「すくいばち(掬撥)」の略。
※雑俳・水加減(1817)「丸うなって・すくひの利かぬ芸子の撥」
③ 取引市場で、短期間の転売、買戻しによって僅少の利益を得ること。また、相場で機敏に立ち回って利益を得ること。〔大坂繁花風土記(1814)〕
織物の一種。綴織と同様の工程で模様を織り出すが、綴織よりも、太く粗悪な糸を用いたものをいう。名古屋帯、袋帯などに用いる。
漁法の一つ。潮の干満の差の大きい沿海地方で海中に石を積んで一〇〇メートル前後の半円形の囲いをつくり、満潮時に囲いに入り、干潮時に囲いの外に出られないで残っている魚を採る漁法。有明海沿岸地方、沖縄などに残る。

す・く【掬・抄】

〘他カ四〙 水、または水中にあるものなどをすくいとる。すくう。
梁塵秘抄(1179頃)二「いざたべ、隣殿、大津の西へ、雑魚(ざこ)すきに」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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