懸帯(読み)かけおび

改訂新版 世界大百科事典 「懸帯」の意味・わかりやすい解説

懸帯 (かけおび)

江戸時代の裳(も)についている帯と,平安時代の社寺参拝などのとき女子が胸から背にかけて垂れ結んだ帯をいう。(1)は平安時代になって形式的に衣の後ろにつけるようになり,そのひもも装飾化して引腰(ひきごし)などというものもできたが,鎌倉時代以後,裳は平時には用いられなくなり,その着装法にも変化が起こった。江戸時代に至って,この裳をつけるのに,唐衣(からぎぬ)と同じきれでこれにししゅうをしたり,あるいは糸の飾りをおいた帯を裳の後ろの腰につけて,これを肩越しに胸にかけてつるようになり,これを裳の懸帯といった。これは古代裙帯(くんたい)のなごりであるという説もあるが明らかでない。江戸後期の天保年間(1830-44)からこの懸帯の形式は廃止されて,小腰(こごし)として腰にまわして前で結ぶこととなった。(2)《枕草子》に〈帯うちかけて拝みまつる云々〉とあるように,平安時代社寺参りのとき,裳の懸帯とは別に胸から背にかけて後ろで結び垂れた帯も懸帯という。この起源も不明であるが,古代のたすき領巾ひれ)のたぐいで,一種の儀礼的服飾品として用いられたものであろう。色は多く赤が用いられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「懸帯」の意味・わかりやすい解説

懸帯
かけおび

公家(くげ)女性の衣服の付属物。

(1)中世公家女性が社寺に詣(もう)でるとき、袿(うちき)や被衣(かずき)の上に、胸から背に懸けた絎紐(くけひも)状の赤い帯。古代の襷(たすき)の名残(なごり)といわれる。

(2)中世末、近世女房装束十二単(じゅうにひとえ))の裳(も)につけられた帯。元来裳は、腰で締めて着装するものであって、平安時代中期以降の裳が、単に威儀を正し、装飾的なものとなって後方に引くだけのものとなってからも、腰の位置で締めることに変わりはなかった。しかし、服装の簡略化によって、室町時代末ごろから、裳に懸帯とよぶ紐を左右に結び付けて肩から背面、裾(すそ)にかけて垂らすようになった。江戸時代になると、懸帯は唐衣(からぎぬ)の地質と同じものを用い、刺しゅうを施したものとなった。

[高田倭男]

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普及版 字通 「懸帯」の読み・字形・画数・意味

【懸帯】けんたい

武器を携行する。

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