意見・異見(読み)いけん

精選版 日本国語大辞典 「意見・異見」の意味・読み・例文・類語

い‐けん【意見・異見】

〘名〙
① ある物事や判断に対して持つ考え。見解。
※続日本紀‐養老五年(721)二月甲午「各仰属司、令意見
平家(13C前)一「此の事天下において異なる勝事なれば、公卿僉議あり。おのおの意見をいふ」 〔韓愈‐新修滕王閣記〕
② (━する) 思うところを述べて、いさめること。忠告説教訓戒
※平家(13C前)一〇「新中納言知盛の意見に申されけるは」
※浮世草子・好色一代男(1682)六「身おもふ人には世の事を異見し」
室町幕府寺院の訴訟制度において、意見衆(評定衆、右筆衆あるいは供僧など)が衆議して決定した答申。→意見状
※東寺百合文書‐ハ・延文元年(1356)四月二一日・東寺供僧意見状「右両条、可賜御意見矣」
[語誌](1)表記は、「色葉字類抄」に「意見」とあるが、中世後期の古辞書類になると「異見」とするものが多く、「又作意見」(黒本本節用集)のように注記を添えているものも見られる。近世の節用集類も「異見」を見出し表記に上げているが、明治時代に入ると典拠主義の辞書編纂の立場から「意見」が再び採られるようになり「異見」は別の語とされた。文学作品の用例を見ても、中世後期から近世にかけては、「異見」が一般的であった。
(2)「意見」は、「色葉字類抄」に「政理分」と記されていることや「平家物語」の用例によると、本来政務などに関する衆議の場において各人が提出する考えであった。そのような場で発言するには、他の人とは異なる考えを提出する必要がある。そのようなところから、「異見」との混同が生じたものと思われる。
(3)中世も後期になると、「異見」の使用される状況も拡大し、二者間においても使用されるようになった。それに伴い、②の意味も生じてきた。最初のうちは、相手が目上目下に関わらず使用されていたが、訓戒の意が強くなり、次第に目上から目下へと用法が限定されてきた。

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