恐・畏・怖・懼(読み)おそれる

精選版 日本国語大辞典 「恐・畏・怖・懼」の意味・読み・例文・類語

おそ・れる【恐・畏・怖・懼】

〘自ラ下一〙 おそ・る 〘自ラ下二〙
恐怖を感ずる。身に危険を感じたりしてびくびくする。心がひるむ。
大和(947‐957頃)一七二「近江の守、いかにきこしめしたるにかあらむと歎きおそれて」
平家(13C前)八「軍(いくさ)におそれて下人ども皆落ちうせたれば」
② 何か悪いことが起こるのではないかと気づかう。心配する。あやぶむ。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「季英(すゑふさ)が便(たより)を失ひ、学問に疲るるをば、一度のしきおこなふおそれて」
③ かしこまる。畏敬する。おそれおおく思う。恐縮する。
今昔(1120頃か)一「憂陁夷、王の仰せに恐れて答る事无し」
人情本・恋の若竹(1833‐39)下「『恐(オソ)れたか』『恐れ入りました』」
洒落本・仕懸文庫(1791)四「二分狂言ではおそれるのう」
[語誌](1)「おそる」は、古くは四段または上二段の活用をし、中古から次第に下二段が普通になるが、その後も四段・上二段は訓読語の中に残存する(→「おそる(恐)」の語誌)。
(2)平安時代後期まではおもに漢文訓読系の文章に用いられたが、それ以後訓読系の文に限らず多用され、急速に一般化した。しかし、日常語として古来用いられたのは、主に「おづ(おじる)」である。
(3)一般に、「おづ」が無意識的な身体的反応としての恐怖の動作を表わすのに対し、「おそる」はどちらかというと、意識的・精神的な反応を表わす。したがって「おそる」は、恐怖だけでなく、将来を危惧したり、他人のことを心配したり、尊貴なものを畏怖したりする場合にも使われる。→「おじる(怖)」の語誌

おそ・る【恐・畏・怖・懼】

(平安以前では、上二段、四段、下二段と活用し、のち下二段が残る。→おそれる)
[1] 〘自ラ上二〙 =おそれる(恐)
※東大寺本地蔵十輪経元慶七年点(883)二「後世苦果を見ず畏りじ」
[2] 〘自ラ四〙 =おそれる(恐)
※不空羂索神呪心経寛徳二年点(1045)「若し疾疫の鬼魅身に著くこと恐(オソラ)ば」
[3] 〘自ラ下二〙 ⇒おそれる(恐)
[語誌](1)上二段、四段のいずれか不明の例が多い。たとえば、「続日本紀‐神亀元年二月四日・宣命」に「恐み受け賜はり懼(おそリ)坐す事を」、「古今仮名序」に「かつは人の耳におそり、かつは歌の心に恥ぢ思へど」、「今昔‐二九」に「兼て怖(おそ)り思ひ次(つづ)けて臥したる程に」など、連用形「おそり」がそれである。
(2)「恐(おそ)る」は古く上二段にも四段にも活用したが、上二段が古いと思われる。四段活用は院政期ごろまで用いられたらしく、ひきつづいて下二段活用も現われた。→おそれる(恐)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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