心もなし(読み)ウラモナシ

デジタル大辞泉 「心もなし」の意味・読み・例文・類語

うらもな・し

とりたてて思い煩うことがない。屈託がない。
「―・く我が行く道に青柳りて立てれば物つも」〈・三四四三〉
相手に対して、自分の心の中を包み隠したりしない。
「―・くなつかしきものから、うち解けて」〈・若菜上〉
相手に気を遣ったり、遠慮したりしない。
「あさましと思ふに―・くたはぶるれば」〈かげろふ・中〉

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精選版 日本国語大辞典 「心もなし」の意味・読み・例文・類語

うら【心】 も なし

(名詞うら」に、助詞「も」、形容詞「なし」が付いたもの。「うら」は心または裏の意)
① 心の中に、とりたてて思い煩うことがない。何心もないさまである。なにげないようすである。無心だ。くったくない。
万葉(8C後)一四・三四四三「宇良毛奈久(ウラモナク)わが行く道に青柳(あをやぎ)の張りて立てれば物思(も)ひ出(で)つも」
② 相手に対して、顧慮したり遠慮したりしない。むとんじゃくだ。無遠慮だ。
蜻蛉(974頃)中「あさましと思ふに、うらもなくたはぶるれば、いとねたさに」
③ 相手に対して、自分の心の中を包み隠したりしない。心の中で相手を恨んだり疑ったりするような隔て心がない。
※宇津保(970‐999頃)楼上上「うちとけてうらもなうこそたのみけれ思ひの外に見ゆる下紐
[補注]上代用例はすべて、「うらもなし」で、「うらなし」の形はとらない。

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