当前(読み)あたりまえ

精選版 日本国語大辞典 「当前」の意味・読み・例文・類語

あたり‐まえ ‥まへ【当前】

〘名〙
① 共同労働の収穫を分配するとき、一人あたりの受けるべき配当一人前分量。漁獲物などを現物で配分する時、人数分に分けた一山。
② (形動) (①を受け取ることは当然の権利であるところから) 道理から考えて、そうあるべきこと。また、そのさま。当然。
※箚録(1706)「其人の左無て叶ざる当り前の旨を以て引入進め諫するを云」
滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「アイサ、どうで婆鯨舎(ばばあげいしゃ)はあたりめへさ。夫だから賀の祝と一緒に、赤飯(こはめし)を配って引込む覚期(かくご)だが」
③ (形動) ごく普通のこと。ありふれているさま。
※大学垂加先生講義(1679)「静の字、尋動静とわかつあたりまへの静にはあらず、妄に動ぬを静と云たもの也」
※歌舞伎・心謎解色糸(1810)大切「なにサ、裸はでんぼうの当り前(メエ)、土仕事にでもかかりゃア、寒の中(うち)でも真っ裸
[語誌]②の意味については、①の意味から転じたという説の他に、漢語「当然」に「当前」という表記をし、さらにそれを訓読みしたものから出たという説がある。類例に、漢語「同然」が「同前」と表記されるということがある。

とう‐ぜん タウ‥【当前】

〘名〙
① (副詞的にも用いる) 眼前にあること。また、当面している事柄であること。さしあたり。まのあたり。目前
※俳諧・田舎の句合(1680)二四番「隣家の蛤より、当前のぬかみそを愛せんにはしかじ
浮世草子・国姓爺明朝太平記(1717)一「当前(タウゼン)むねんにおぼしめす華清夫人を、是非なきものにするおぼしめしたちはおはせぬか」

とう‐まえ タウまへ【当前】

〘名〙
① 目の前にせまっていること。さしあたってのこと。当座
※浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸「当前(タウマヘ)の事はおいて、古借銭まで払て」
祭礼などの当番の組。祭の当番を集団で引き受ける組。

あたり‐まい【当前】

〘名〙 (形動) 「あたりまえ(当前)」の変化した語。
※落語・お節徳三郎恋の仮名文(1889)〈禽語楼小さん〉「小供の事だから早く土手へ昇(あがっ)て遊びたいとか群集の中へ往(いき)たいと思ふのが通常(アタリマイ)だのに」

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普及版 字通 「当前」の読み・字形・画数・意味

【当前】とうぜん

当面。

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