布施郷
ふせごう
新庄町西部一帯の中世郷名である。欠年の金峯山免田田数注進状（天理図書館保井文庫）によると、葛下郡二七条七里・八里、二八条七里、二九条六里・七里・八里、三〇条八里に「フセ」の地名がみえ、ほぼ現在の大字北道穂・南道穂・弁之庄・中戸・新庄・葛木・大屋・南藤井・寺口付近にあたる。寺口には小字布施が存在する。
「大乗院雑事記」康正三年（一四五七）の一乗院御坊人名（国民）のなかに「越智・布施・万歳の箸尾・高田（下略）」とある布施氏の居地であり、布施城跡が寺口西方、葛城山中に残っている。布施氏は中世大和武士の一として活躍、至徳元年（一三八四）の長川流鏑馬日記（天理図書館保井文庫）にも布施殿の名がみえる。
布施郷
ふせごう
平安期にみえる相馬郡内の郷で、のちの相馬御厨の前身と考えられる。布瀬とも。大治五年（一一三〇）六月一一日の下総権介平経繁私領寄進状案（櫟木文書）に相馬郡布施郷とみえ、経繁（常重）が当郷を伊勢皇太神宮（内宮）に寄進している。その四至としてみえる東境の「蚊虻」は現茨城県利根町立木の蛟
神社の地、南境の「志子多谷并手下水海」は現柏市篠籠田および手賀沼、西境の「廻谷并東大路」はほかに「繞谷并目吹岑」「木埼廻谷」とあることから現野田市目吹・木野崎の一帯、北境の「小阿高并衣河流」は「阿太加并絹河」とみえることから現茨城県伊奈町足高および常総境を流れる鬼怒川（現小貝川）に比定され、広大な地域となる。
布施郷
ふせごう
中世の郷で、現大原町下布施・上布施、現御宿町上布施に比定される。永仁六年（一二九八）九月二一日の関東下知状（覚園寺文書）に「伊南庄布施郷」とみえ、伊北庄司小太郎（法名覚仏）は、亡父伊北平次（法名定阿）からの正応二年（一二八九）七月二九日と同年八月八日の両通の譲状に任せて布施郷内の田・屋敷を鎌倉幕府より安堵されている。
布施郷
ふせごう
「和名抄」所載の郷で、同書名博本は有勢とするが、誤写とみられる。諸本とも訓を欠くが、フセであろう。「出雲国風土記」によれば仁多郡四郷の一つで、郡家の西一〇里に郷長の家があり、地名は「大神命の宿り坐しし」ことに由来し、初め布世と称していたが、神亀三年（七二六）布勢に改めたという。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
