朝日日本歴史人物事典 「市村羽左衛門(9代)」の解説
市村羽左衛門(9代)
生年:享保10(1725)
江戸中期の歌舞伎役者,市村座の座元。俳名家橘,屋号菊屋。市村家は,中村勘三郎家,森田勘弥家と共に代々座元を世襲,公許の興行権と劇場を所有して役者たちの掌握をも行っていた。9代目というのは,市村家に興行権を譲った村山家を含めての代数で,市村家としては7代目。また羽(宇)左衛門という名義としては4代目に当たる。亀蔵の名で享保16(1731)年初舞台を踏む。宝暦12(1762)年,父8代目羽左衛門が没したため,襲名して跡を継いだ。しかし,天明4(1784)年,かさんだ借金のため市村座は興行不能となり,桐長桐を座元とする桐座に興行権を譲った。羽左衛門自身は翌年中村座で一世一代(引退興行)を勤め,その年没した。役者としては特に所作事に長じ,変化舞踊の名手として知られる。『芝居乗合話』(2代目中村重助著,寛政年間)によれば,大変覚えが悪かったが本番になるとすばらしかったという。<参考文献>国立劇場芸能調査室編『東都劇場沿革誌料』(歌舞伎資料選書6巻),『日本庶民文化史料集成』6巻
(池山晃)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報