小河郷
おがわごう
「和名抄」東急本は木行郷の次に置き、「小川」とする。東急本・高山寺本ともに訓を欠く。「日本地理志料」は「乎加波」と訓を付す。寛永郷帳にみえる南小川村・北小川村を中心に成立した現下益城郡小川町が遺称地。建久六年（一一九五）三月日の甲佐社領立券解案（阿蘇家文書）に八代北郷の内として「南小河」と「北小河」があげられ、それぞれ四至が記載されている。正平一六年（一三六一）には八代庄を本拠とする名和顕興の代官が大勢を率いて社領の小河両郷の所務を妨げ、雑掌・祝・神人を打擲したとして、甲佐宮祠官らは阿蘇、健軍・藤崎（現熊本市）、郡浦（現宇土郡三角町）各社などに協力を求めている（同年八月「甲佐宮牒写」藤崎八幡宮文書）。
小河郷
おがわごう
鎌倉期よりみえる地名。古代の小河郷の郷名を継承するが、同郷は勅旨牧の小川牧の比定地でもあり、日奉姓の武士団である西党が勢力を伸ばしたとされる。武蔵国の在庁官人日奉氏は、この小川牧や由比牧（現八王子市）の管理を行いつつ武士化し、多摩郡の各地に分出していった。建暦三年（一二一三）九月一日幕府の要職にあった源親広は、日奉姓小川直高と同族二宮忠久との二宮神社地頭職をめぐる相論を裁許し、小川直高を二宮神社の地頭職に補任し、二宮神官・百姓等に報じた（「源親広下文写」川上忠塞一流家譜）。
小河郷
おがわごう
「和名抄」諸本にみえる郷名。訓を欠くが、上総国畔蒜郡小河郷および武蔵国多磨郡小川郷の「乎加波」の訓と同じであろう。郷名は式内社小河泉水神社（現清水町湯川の同名社に比定）の名称にみられるように湧水が多く、河川の水源となっていることによる。現三島市壱町田から同市中心部、清水町湯川付近に比定され、三嶋大社も鎮座する。
小河郷
おがわごう
「和名抄」高山寺本のみにみえる。訓はない。郷域は、諸説ともに安城市内の旧小川村に一致している。「大日本地名辞書」では同市内南方の寺領・野寺・木戸・藤井の各旧村域を加える。
小河郷
こがわごう
「和名抄」名博本にみえる郷名。東急本は「小何郷」につくる。名博本にコカハの訓がある。「延喜式」兵部省諸国駅伝馬条にみえる小川駅も当郷に設置されたと考えられる。
小河郷
おかわごう
「和名抄」所載の郷で、同書高山寺本・東急本・元和古活字本に乎加波の訓がみえる。現君津市大谷の付近を流れる御腹川をかつて小川と称していたとして、当郷の遺称地とする説がある。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
