守・護(読み)まもる

精選版 日本国語大辞典 「守・護」の意味・読み・例文・類語

ま‐も・る【守・護】

〘他ラ五(四)〙 (「目(ま)(も)る」の意)
① 目を離さないで、じっと見る。見つづける。見守る。見つめる。うちまもる。
書紀(720)雄略一八年八月(前田本訓)「敢へて進み撃たず、相持(マモル)こと二日一夜」
徒然草(1331頃)一三七「花のもとには、ねぢ寄り立ち寄り、あからめもせずまもりて」
② こっそりと様子を見る。動静に注目する。直接目では見えないものについてもいう。また、好機の到来をじっと待つ。うかがう。
※書紀(720)皇極三年正月(岩崎本訓)「皮鞋(みくつ)の毱の随(まま)脱け落つるを候(マモリ)て、掌中(たなうら)に取り置ちて」
※大和(947‐957頃)一四八「下簾のはざまのあきたるより、この男まもれば、わが妻に似たり」
③ おかされたり奪われたりしないようにする。外敵などを防ぐ。保護する。警固する。
※書紀(720)天武元年六月(北野本訓)「元より辺賊(ほか)の難を戍(マモル)
④ 特に、神仏が、人々や土地が賊や危険におかされないようにする。守護する。
源氏(1001‐14頃)明石「住吉の神、ちかき境を鎮めまもり給」
⑤ 大切なものとして扱う。見守って世話をする。
※書紀(720)天武八年一〇月(北野本訓)「凡そ諸の僧尼は、常に寺の内に住へ、三宝を護(マモ)れ」
⑥ 決まり・規則命令などにきちんと従う。遵守する。
※観智院本三宝絵(984)下「或は戒律をまもりて鉢の油をかたぶけず」
[補注]古くから「まぼる」の形もあった。

ま‐もり【守・護】

〘名〙 (動詞「まもる(守)」の連用形名詞化)
① 見張りをすること。敵に対する備えをかまえること。また、そのような人やもの。特に、辺境守備のための城や敵を防ぐためのとりでなどをさすこともある。守備。警備。警護
※書紀(720)欽明五年三月(寛文版訓)「仍りて我が久礼山の戍(マモリ)を擯(お)ひ出でて」
② 神仏などがわざわいを取り除き、幸運をもたらしてくれること。神仏などの加護があること。また、そのような神仏。守り神。守護神。
※大和(947‐957頃)一四七「御とくにとしごろねたき物うち殺し侍りぬ。今よりはながき御まもりとなり侍るべき」
③ 神仏の霊がこもっていて人を守護するという、小さな品物や札。おまもり。守り札。護符。また、これを身につけるための袋。守り袋。
※後撰(951‐953頃)恋三・七六一・詞書「まもりおきて侍りける男の、心かはりにければ、其まもりを返しやるとて」
④ 護身用としていつも身につけておく短い刀。懐刀。守り刀。
浄瑠璃・生写朝顔話(1832)浜松の段「古部三郎兵衛といふ人に此守(マモリ)を証拠に廻り合ひ」
⑤ 紋所の名。守り札や守り袋をかたどって図案化したもの。祇園守筒守などの種類がある。
[補注]古くから「まぼり」の形もあった。

まぼ・る【守・護】

〘他ラ四〙
※蜻蛉(974頃)中「人は目をくはせつつ、いとよく笑みて、まぼりゐたるべし」
※法華経玄賛保安三年点(1122)「闚(ひそか)に貼(マホリ)伺ひ視るなり」
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「秦の桂林を戍(マボリ)て則ち珠浦に通へりしがこときのみならむや」
※重家集(1178)「君が代を百とせづつや八百よろづそこらの神のまぼりまつらん」
※不空羂索神呪心経寛徳二年点(1045)「五には密しく諸根を護(マホラ)む」
※今鏡(1170)一〇「女のいさぎよき道をまほりて」

まぶ・る【守・護】

〘他ラ四〙 (「まぼる(守)」の変化した語)
※西行物語(鎌倉中)「供なりける入道なきかなしみければ、西行つくづくとまぶり」
※足利本仮名書法華経(1330)一「そのきずをまふりをしむ」
※撰集抄(1250頃)九「百王をまふりたてまつらんと云御誓ひ」
※浄瑠璃・大経師昔暦(1715)上「女房ひとりまぶってゐる男とてはなけれ共」
※撰集抄(1250頃)一「詮はまことの道心侍らば、〈略〉只、よぎりなくまふるべきにや」

まぼり【守・護】

〘名〙 (動詞「まぼる(守)」の連用形の名詞化)
※御湯殿上日記‐文明一三年(1481)四月一六日(頭書)「あふひかつらともまいる。かうしん御まほりあり」
※大鏡(12C前)三「ましておはしまさぬあとには、さやうに御まぼりにてもそひまうさせ給つらん」
※神楽歌(9C後)採物・鉾「〈末〉四方山の 人の万保里(マボリ)に する鉾を 神の御前に 斎ひ立てたる 斎ひ立てたる」

まぶり【守・護】

〘名〙 (動詞「まぶる(守)」の連用形の名詞化)
※西行物語(鎌倉中)「我等が先祖、秀郷将軍、東域をしづめてよりこのかた、ひさしく朝家の御守(マフリ)として世をしづむ」
※一茶方言雑集(1819‐27頃)「菜の花や畑まふりの大蕪〈毛紈〉」
※撰集抄(1250頃)八「かたく小さき蓮の実なり。〈略〉これを錦のふくろに縫ひくくみて、まふりにかけてけり」

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