天網恢恢(読み)てんもうかいかい

四字熟語を知る辞典 「天網恢恢」の解説

天網恢恢

「天網恢恢疎にして漏らさず」の略。天は決して悪人悪事を見逃さないということ。

[使用例] てんちゅうも骨が折れるな。これで天網恢々疎にしてらしちまったり、何かしちゃ、つまらないぜ[夏目漱石坊っちゃん|1906]

[使用例] そくいんの情ひときわでありますが、我々の期待を裏切り、多大な迷惑をかけた報いだとすれば、天網恢々疎にして漏らさず、と言ってやる他ありません[杉元れいいち*就職戦線異状なし|1990]

[使用例] だが、生物を掌握している自然が、私だけに特権を与えるはずはない。天網恢恢疎にして漏らさず、というしんげんの通り、私の肌は見えない部分ひどく衰えているのである[黒岩重吾*花毒|1997]

[解説] 中国・戦国時代の「老子」に出てくることばです。原典での言い方は「天網恢恢、にして失わず」。
 天の道理には誰も逆らうことができません。天は、人と争うことなく勝ち、何も言わずに人に答えを示し、「こうせよ」と命じなくても人に行動させます。
 天の網は大まか(=恢恢)で粗い(=疎)ように見えますが、悪者をのがしません。これが「天網恢恢疎にして漏らさず」、略して「天網恢恢」です。
 「天網恢恢」では、「天の網は大まかだ」と反対意味になってしまう、と言う人がいます。でも、略した部分の意味がわかっていれば問題ありません。「三十六計など、大事な部分が省略される成句はしばしばあります。
 例文の[坊っちゃん]のせりふは、主人公たちが、教頭の女遊びの現場を押さえようと見張る場面で出てきます。「天の網が粗いために、もし悪い教頭を逃してしまったら困る」と、成句をもじって、しゃれた使い方をしています。

出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報

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