天塩平野(読み)てしおへいや

日本歴史地名大系 「天塩平野」の解説

天塩平野
てしおへいや

北海道北部の日本海側にあり、留萌支庁天塩郡の天塩町・幌延ほろのべ町、宗谷支庁天塩郡の豊富とよとみ町にまたがる平野。天塩山地の西側で天塩川下流の雄信内おのぶない(オヌプナイ)から広がる河谷低地のウブシ原野と、河口付近の右岸から北方の海岸沿岸に広がるサロベツ原野でその大半を占める。ほかに天塩山地や宗谷丘陵から各原野に流入する小河川が造る小扇状地、天塩山地西縁や宗谷丘陵西縁に砂礫層・ローム層をのせる台地(海岸段丘面)がみられ、また天塩川河口から三―四列の海岸砂丘帯が北の稚咲内わかさかないまで約三五キロの長さで続き、これらも当平野に含まれる。サロベツ原野は天塩川右岸支流のサロベツ川水系域に堆積した広大な泥炭・低湿地で、パンケ沼ペンケ沼北端にあるかぶと沼などの湖沼、サロベツ原生花園に代表される湿原植物群落があり、道内では釧路湿原とともに原始湿原が保たれている。

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改訂新版 世界大百科事典 「天塩平野」の意味・わかりやすい解説

天塩平野 (てしおへいや)

北海道北西部,天塩川下流の日本海に臨む平野。留萌(るもい)支庁と宗谷支庁にまたがり,大部分が標高5m以下の低平な原野である。地域的には,天塩川の支流サロベツ川流域で丸山(13m)以北の上サロベツ原野,以南の下サロベツ原野,そして天塩川下流左岸のウブシ原野に分けられる。上・下サロベツ原野の海岸には3~4列の砂丘列が並行して走り,砂丘列の間には細長い小湖沼が連なる。砂丘の東側の原野にも兜(かぶと)沼,ペンケ沼(とう),パンケ沼(とう)などラグーン性の湖沼が残り,ミズバショウ,ワタスゲ,エゾカンゾウなど湿原植物の群落がみられる。原野周辺の丘陵のすそには20~40mの段丘状の地形もみられる。また丘陵内にも,丘陵を開析する小河川の谷に沿って原野面が深く入りこんでいる。原野の名で呼ばれるように,この平野の大半は未利用地で,石狩平野,釧路平野とともに北海道の三大泥炭地に数えられるが,1972年から国営の農地開発事業が進められ,一部では草地酪農が行われている。利尻礼文サロベツ国立公園に属する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天塩平野」の意味・わかりやすい解説

天塩平野
てしおへいや

北海道北部,日本海にのぞむ平野。面積 230km2。北,南,東を天塩山地に囲まれ,西は日本海に面する直線状の砂浜で,標高 10~50mの砂丘が数列並行して発達。砂丘の内側は排水が悪く,低湿なサロベツ原野を形成,ペンケ沼 (とう) ,パンケ沼,兜沼などがある。泥炭地が広く,ミズゴケ,ワタスゲ,ヤチヤナギガンコウランなどの植物が茂り未利用地が多い。ところどころにエゾマツ林とその周囲にササ,ヨシ,ハンノキなどの生えたところもある。近年泥炭地開発が進み,豊富町丸山地区は,そのモデル地区。5~10月の月平均気温は 14.5℃と冷涼なため米作は行われず,草地酪農が盛ん。池沼が多いため,100種類以上の野鳥が生息。エゾキスゲ,ヒオウギアヤメなどの群落で有名なサロベツ原生花園がある。北部海岸一帯は利尻礼文サロベツ国立公園に属する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天塩平野」の意味・わかりやすい解説

天塩平野
てしおへいや

北海道北部、日本海沿いにある平野。宗谷(そうや)総合振興局管内と留萌(るもい)振興局管内にまたがる。天塩川が平野の南部を流れて海に注ぐ。大部分が標高10メートルに達しない低平な原野で、北部の上サロベツ原野、南部の下サロベツ原野、天塩川下流左岸のウブシ原野に区分することができる。直線状の海岸線に沿って数条の砂丘列が発達し、その内側には兜沼(かぶとぬま)、ペンケ沼(ぺんけトー)、パンケ沼(ぱんけトー)など大小の沼が散在する沼沢地で、広大な泥炭地となっている。泥炭地の開発は1910年(明治43)ごろから始まったが、一部を除いては成功しなかった。第二次世界大戦後は国営の農地開発事業が進められ草地酪農が行われている。沿岸部などは利尻礼文(りしりれぶん)サロベツ国立公園に含まれる。

[岡本次郎]


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