日本大百科全書(ニッポニカ) 「大菩薩峠(山梨県)」の意味・わかりやすい解説
大菩薩峠(山梨県)
だいぼさつとうげ
山梨県甲州市(こうしゅうし)と北都留(きたつる)郡小菅村(こすげむら)の境界をなし、笛吹川(ふえふきがわ)水系と多摩川(たまがわ)水系の分水界をなす稜線(りょうせん)上の峠。標高1897メートル。江戸時代、江戸より甲府に至る甲州街道の裏街道である青梅街道(おうめかいどう)(新宿追分―青梅―甲府)の一大難所であった。今日では柳沢峠(やなぎさわとうげ)が開かれており、実用的な峠路としての利用はない。北西に大菩薩嶺(れい)がそびえ、甲府盆地と南アルプスの遠望や南の富士山の姿もみごとである。ハイキングコースもこの峠や大菩薩嶺を回遊する初心者向きから、小金沢(こがねざわ)連峰の縦走、あるいは松姫峠への尾根歩きなど健脚ないし経験者向きの選択ができ、関東に近く交通の便もよいことから多くの人々に親しまれている。中里介山(なかざとかいざん)の小説『大菩薩峠』で広くその名を知られ、西側が茅戸(かやと)(草原)で明るい山容の中に中里介山の文学記念碑がある。秩父多摩甲斐(ちちぶたまかい)国立公園の一部。JR中央本線塩山駅からバスで裂石(さけいし)に入り、登山路をとるのが一般的。
[吉村 稔]