土壌生態系(読み)どじょうせいたいけい(英語表記)soil ecosystem

改訂新版 世界大百科事典 「土壌生態系」の意味・わかりやすい解説

土壌生態系 (どじょうせいたいけい)
soil ecosystem

土壌を生活の重要な拠点としている高等植物の根系,土壌動物土壌微生物が,それぞれの生物群集の間で,またそれらをとりまく土壌の物理・化学的環境と,密接な相互作用で結びつけられて,全体として一つのシステムを形成している状態をいう。土壌生態系は,陸上生態系のエネルギー転流と物質循環の生物過程において,主として動植物遺体の消費・分解の役割を担当している。土壌生態系を構成する生物群集中,微生物現存量(生体重)は土壌動物のそれより大きく,また微生物の有機物分解力も単位現存量当り動物にくらべてきわめて大きい。しかし,土壌中における有機物分解は微生物のみで行われることはなく,これに動物が協力して進められている。動物は地表に落下してくる落葉・落枝を土壌中深く運搬し,移動が容易でない微生物と植物遺体の接触を容易にしている。動物が存在する条件と存在しない条件で落葉の分解を比較すると,動物のいない条件下で分解速度が著しく低下することが知られている。植物根系は伸長するのに伴い,分泌物として糖,アミノ酸有機酸を放出し,根冠細胞や根毛をたえず脱落させて,土壌微生物や土壌動物に栄養源を与えている。十分に管理された肥沃な土壌では,動物と微生物が一定バランスを保っている。個々の生物の種類,現存量,生物活性には季節的にまた外界からの影響で変動が起こるとしても,土壌生物群集全体としては現存量と生物活性の変化に対して大きな抵抗性を示す。このような土壌生態系の緩衝調節過程には,土壌生物間の共生的相互作用と拮抗作用が大きく関与していると考えられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報