囃子田(読み)ハヤシダ

デジタル大辞泉 「囃子田」の意味・読み・例文・類語

はやし‐だ【×囃子田】

花田植え

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「囃子田」の意味・わかりやすい解説

囃子田 (はやしだ)

民俗芸能の一種。太鼓,すりささら,笛,銅鈸子(どびようし)などで囃しながら行う田植行事。現在中国地方の山間部に残り,地方によりサゲ田,田囃子,花田植,大田植などの名で呼ばれる。古くは全国的に行われ,名主(みようしゆ)の門田(かどた)や,地主大田,神社の神田などの特殊な規模の大きな田植で見られた。田植を楽や歌で囃すことは,秋の実りをより豊かにする呪術で,照葉樹林文化圏共通の儀礼と思われ,ネパールチベットや韓国の珍島(ちんとう)などでも見られる。日本でも早くから行われ,《栄華物語》によれば,平安時代中期には早乙女,腰鼓・笛・ささらなどの囃子,田主(たあるじ)夫婦,昼飯持ちの一行が出る実際の田植行事が,貴族の賞翫(しようがん)の対象となっていた。中世の囃子をともなう田植のようすは,《法然上人絵伝》や《大山寺縁起絵巻》に描かれているほか,全国に残る田遊(たあそび)などにその面影が残る。また中世末期に中国地方の囃子田で歌われた田植歌は,《田植草紙》として残り,中世庶民歌謡の宝庫とされる。なお,中国地方の山間部で実際に行われる大規模な囃子田は,早朝のサンバイ(田の神)祭に始まり,苗取り,代搔き,田植と続くが,代搔きには華やかに飾りたてた近在の牛が数十頭集まり,〈鶴の巣籠り〉とか〈天の三星〉などという特殊な呪術をこめた代(しろ)が搔かれる。このような囃子田の行事のあと,第2次大戦以前までは秋の豊穣を願って,田植終了後に残りの苗を互いにぶつけあう苗打ちの行事があり,夜は若者たちの性が解放されたとも伝える。
田遊 →田楽
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世界大百科事典(旧版)内の囃子田の言及

【霧島温泉郷】より

…広義には鹿児島県北東部から宮崎県にまたがる霧島山周辺のすべての温泉を含む地域であるが,普通は霧島山南西斜面の標高600~800mにある諸温泉地帯をいう。大部分は鹿児島県姶良(あいら)郡牧園町に属し,明礬(みようばん),硫黄谷,栄之尾,林田,丸尾,栗川などのほか,10以上の泉源がある。泉温は60℃以上,泉質は硫化水素泉,酸性ミョウバン泉,食塩泉などである。…

※「囃子田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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