デジタル大辞泉
「嘲」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
あざけ・る【嘲】
[1] 〘自ラ四〙
① あたりかまわず勝手な口をきく。また、大きな声を出す。ふざける。
※大乗顕識経平安初期点(850頃)下「麗妓侍り繞て、笑ひ譃(アサケリ)、嬉び戯れ」
※
今昔(1120頃か)一九「常に
遊女・
傀儡を集めて、歌ひ嘲けるを以て役
(やく)とす」
※後
拾遺(1086)序「近くさぶらひ遠く聞く人、月にあざけり、風にあざける事たえず」
[2] 〘他ラ五(四)〙 ばかにして悪く言ったり笑ったりする。
※
書紀(720)神代下(水戸本訓)「故、吾田鹿葦津姫、乃ち慍
(いかり)て曰
(い)はく『何為
(なむす)れぞ妾
(やつこ)を嘲
(アサケル)』といふ」
※
霊異記(810‐824)上「法花経品を読む人を呰
(アサケリ)て〈興福寺本訓釈 呰 阿佐毛リ〉」
[語誌]「あざ」は「あざわらふ」の「あざ」と同じ。「観智院本名義抄」の「嗤・
・欺」には「あざける、あざむく」の二訓が含まれ、「色葉字類抄」では「嘲・
・詐・欺」等が二訓に共通する。(一)②の
挙例「後拾遺‐序」が八代集抄本では「風にあざむく」となっているのは、「あざける」と「あざむく」がほぼ
同義に解されていたことを示すものであろう。中世以降、
軍記物などでは明らかに混同されて用いられている。また、平安時代和文系の
文章には
用例が少なく、「おとしむ」などに対する訓読語系の語とする
指摘もある。
ちょう‐・す テウ‥【嘲】
[1] 〘他サ変〙 あざける。ばかにする。からかう。
嘲弄(ちょうろう)する。
※宇治拾遺(1221頃)三「これを聞きて、かやうのものをば、構へててうすまじきなり」
[2] 〘他サ四〙 (一)に同じ。
※
洒落本・大通秘密論(1778)今
助六が説「『おまへをしらねひ、
女郎もあるまい』『
コレてうすない』」
えつらか・す ゑつらかす【嘲】
〘他サ四〙 ばかにして笑う。あざける。からかう。
※霊異記(810‐824)中「
船長(ふなぎみ)、嬢を見て、言ひ煩はし嘲
(ヱツラカシ)啁
(もてあそ)ぶ〈国会図書館本訓釈 嘲 恵都良可志〉」
あざけり【嘲】
〘名〙 (動詞「あざける」の
連用形の
名詞化) (
世間の人などが)ばかにして笑うこと。
※輔親集(1038頃)「かたくななる親のために、いよいよあざけりを残すことなかれ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報