和与状(読み)ワヨジョウ

デジタル大辞泉 「和与状」の意味・読み・例文・類語

わよ‐じょう〔‐ジヤウ〕【和与状】

中世訴訟当事者間で和解成立した場合、その条件などを記して作成した文書

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精選版 日本国語大辞典 「和与状」の意味・読み・例文・類語

わよ‐じょう ‥ジャウ【和与状】

〘名〙 鎌倉時代、訴訟当事者間で和解が成立した時に作成する文書。「和与」と書く頭書、訴訟の要旨を書く事書、契約内容を記す主文日付と発行者の署判から成っている。当事者は互いに相手の文書と交換しあった後に幕府の裁判所に提出し、幕府では担当奉行が証判を裏書してその旨を確認した。和与の状。
高野山文書‐文永九年(1272)正月二〇日・関東下知状「高野山根本大塔領備後国大田庄桑原方預所行誉、寺家年預浄任等、与地頭松熊丸〈今者宗有〉代常蓮相論所務事。右擬召決之処、文永七年十二月廿一日、両方出和与状畢」

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改訂新版 世界大百科事典 「和与状」の意味・わかりやすい解説

和与状 (わよじょう)

中世において和与,すなわち無償贈与紛争和解にともなって作成された文書をいう。ただし前者の贈与(他人和与)にともなう和与状は避文(さりぶみ)との区別がつけがたく,きわめてまれで特殊な場合であり,普通,和与状というと後者を指す。幕府訴訟法においては,訴訟途中で和解が成立すると,和与と頭書し,和与の諸条件を記し,〈仍和与之状如件〉などと書きとめる和与状が訴人論人の間で交換され,幕府はそれを担当奉行の和与状裏封と和与の裁許状によって公認する。このような幕府法上の和与で特徴的なのは,公家との間での調停的和与であって,荘園下地中分(したじちゆうぶん)の和与はその代表である。なお和与は幕府法の外部,社会の各レベルでも広く行われており,それに基づく和与状および荘園本所などによる和与の裁許状の伝存例が少なく,その形式も幕府法のように整ったものではないが,地域的紛争の処理やその領主による公認などの重要事実を示している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「和与状」の意味・わかりやすい解説

和与状
わよじょう

中世において和与が成立して取り交わされる契約書。和与とは和解して、提起した訴訟を取り下げることをいうが、鎌倉時代の中期以降、地頭(じとう)権の伸張に伴って荘園(しょうえん)領主と地頭との間に紛争が頻発し、その解決を求めて、しきりに幕府に訴訟が持ち込まれた。しかし、この幕府の裁判によらず両者の直接の話し合いによって解決する方法もとられた。これが和与である。訴訟進行中に行われる場合と、それに至らないで行われる場合がある。和与状は当事者双方の連署するものと、各自別々に作成して署名するものとの2種があり、幕府奉行人(ぶぎょうにん)の裏判(うらはん)を受けるのを例とした。また幕府からは和与を認可する旨の下知(げち)状の形式をとった裁許状が出された。なお和与の結集を図絵した和与絵図が描かれる場合もあった。これに対し裁許状のないものを私和与という。

[奥野中彦]

『平山行三著『和与の研究』(1964・吉川弘文館)』

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百科事典マイペディア 「和与状」の意味・わかりやすい解説

和与状【わよじょう】

中世,紛争の和解に伴って作成された文書。和与には贈与の意味もあることから,他人への無償贈与(他人和与)に伴って作成される文書も和与状と呼ばれるが,一般には紛争当事者の和解によって作成されるものをいう。訴訟の過程で両者の和解が成立すると,和与の条件を列記し,その遵守を誓約する旨を記した和与状を交換。さらにそれを公認する幕府担当奉行の和与状裏封と,和与の裁許状(下知状)が与えられた。多くは領家と地頭間の和与,下地中分(したじちゅうぶん)など成立の際に作成された。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「和与状」の解説

和与状
わよじょう

訴訟の途中などで紛争当事者同士の和解(和与)が成立したときに作成される文書。同内容のものを訴論人(そろんにん)が独自に作成して交換する場合と,同文の文書2通を作成してともに1通を保存する場合がある。和与が成立すると,鎌倉幕府はこれを保証するため,和与状の裏に担当奉行の証判(裏封(うらふう))を与え,かつ下知状(和与の裁許状)を発給した。これがないものを私和与といい,のちに訴訟となったときも証拠として採用されない不利益をこうむった。

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世界大百科事典(旧版)内の和与状の言及

【和与】より

…とくに鎌倉幕府の裁判では積極的に和与が奨励され,裁判手続上のどの段階でも和与することが可能であった。この場合,和与条件を列挙し,その遵守を誓約する旨を記した和与状を交換し,さらに和与に公的な効力を付与するための下知状が下付されるのが普通であった。地頭と領家の間に成立した和与の結果,いわゆる下地中分(したじちゆうぶん)などが行われた例が多い。…

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