却て・反て(読み)かえって

精選版 日本国語大辞典 「却て・反て」の意味・読み・例文・類語

かえっ‐て かへっ‥【却て・反て】

〘副〙 (副詞「かえりて」の変化した語。促音を表記しない「かえて」の形もある)
書紀(720)崇神一〇年九月(北野本訓)「汝(いまし)忍びずして吾に羞(はぢ)み令(し)めつ。吾還(カエテ)汝に羞み令(し)む」
狂言記八句連歌(1660)「用あるおりはいろいろ追従などを申。今はかへって悪口などを申まするげな」
※書紀(720)大化二年三月(北野本訓)「二人は其の上の失(あやまてる)所を正さずして飜(カヘテ)共に己(おの)が利(くほさ)求む
史記抄(1477)八「其はかへって不孝にあたるぞ」
③ どちらかといえば。むしろ。
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉三「足は四足有れども、前足は手と呼ぶ方かへって宜し」

かえり‐て かへり‥【却て・反て】

〘副〙 (動詞「かえる(反)」の連用形に助詞「て」の付いてできたもの。漢文の「却」「還」などの訓読に当てられ、副詞として用いられるようになった。「は」を伴うことがある) ある事柄、もしくはその事柄から生じた予期、予想、判断などに対して、それに反し矛盾する事柄を対置する場合に用いる。
① それに反して。逆に。あべこべに。かえって。
※書紀(720)敏達一二年是歳(前田本訓)「国家(みかど)此の時に望(み)たまひて壱伎・対馬に多に伏(かくれ)兵を置きて至(まういた)らむを俟(ま)ちて殺たまへ。翻(カヘリテ)な詐(あざむ)かれたまひそ
② 予期に反して。案に相違して。かえって。
万葉(8C後)八・一六三三「手もすまに植ゑし萩にや還(かへりて)は見れども飽かず心尽くさむ」
源氏(1001‐14頃)夢浮橋「おほん心さし深かりける御中をそむきて〈略〉出家し給へることかへりては仏のせめそふべきことなるを」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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