出光興産(読み)いでみつこうさん

改訂新版 世界大百科事典 「出光興産」の意味・わかりやすい解説

出光興産[株] (いでみつこうさん)

日本有数の石油会社。非上場。1911年(明治44)6月,出光佐三(1885-1981)が門司に個人商店の出光商会を興し,石油販売業を開始したことに始まる。出光佐三が1代で築き上げた民族系最大手の石油会社(民族資本)として,また〈人間尊重の事業経営〉など特異な社風で知られる。大正年間に入って下関を中心に始めた漁船向け燃料油の販売が成功し,中国,朝鮮台湾販路を拡大した。40年,出光商会の朝鮮,台湾,関東州,日本国内の営業資産を継承し,出光興産(株)を設立した。第2次大戦により在外資産をすべて失うなどしたが,49年に石油元売制のスタートで元売会社に指定され,復活の足がかりをえた。56年徳山製油所の建設に着手,10ヵ月の短期間で完成させ,石油精製業にも進出した。原油調達面でも,アングロ・イラニアン社の国有化を断行してイギリスと係争中だったイランからの原油輸入を決行したり(1953),〈赤い石油〉と呼ばれたソ連原油を輸入する(1960)など,積極果敢な行動をみせた。また62年には船舶部を分離して出光タンカー(株)を設立し,つぎつぎにマンモス・タンカーを建造した。近年ウラン開発や地熱開発も手がけるなど,総合エネルギー企業をめざしている。資本金388億円(2004年3月末),売上高2兆4507億円(2004年3月期)。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「出光興産」の意味・わかりやすい解説

出光興産
いでみつこうさん

民族系資本で石油の精製・販売をおもに行なう元売企業。1911年出光佐三が出光商会として個人創業,1914年以後中国大陸,朝鮮,台湾に進出,1940年現社設立。第2次世界大戦後は海外資産のすべてを失ったが経営努力によって再出発,独特の経営方針で成長を続け,1951年には大型タンカー日章丸を建造して,他社にさきがけて自社輸送を開始。1957年徳山製油所,1963年千葉製油所を完成,1964年出光石油化学を設立,1967年には世界初の重油直接脱硫装置を完成させるなど民族系石油会社のリーダーとなった。この間 1962年には船舶部門を分離して出光タンカー設立,1971年日本海石油開発設立,1972年には石油開発公団共同出資で出光タイ石油開発を設立し,資源探査,開発に努め,石炭,ウランなどを含めた総合エネルギー企業を志向。2004年出光石油化学と合併。長らく非上場の大企業として知られたが,2006年に東京証券取引所1部に上場し,創業家が経営から完全に撤退した。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「出光興産」の解説

出光興産

正式社名「出光興産株式会社」。英文社名「Idemitsu Kosan Co., Ltd.」。石油・石炭製品製造業。明治44年(1911)前身の「出光商会」創業。昭和15年(1940)設立。本社は東京都千代田区丸の内。独立系石油元売り大手。給油所に掲げられている横顔マークのモチーフギリシャ神話のアポロン。ウルトラマンのCMも話題に。東京証券取引所第1部上場。証券コード5019。

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