光合成(読み)コウゴウセイ

化学辞典 第2版 「光合成」の解説

光合成
コウゴウセイ
photosynthesis

高等植物,藻類,光合成細菌が行っている太陽光エネルギーによる炭酸同化の生物過程をいい,生物における無機物から有機物合成する独立栄養の一形式である.高等植物および藻類では,光エネルギーを利用して二酸化炭素が水によって還元され,糖が合成されると同時に酸素が発生するが,

光合成細菌では,水のかわりに硫化水素などが酸化されるので酸素は発生しない.光合成では,まず光がクロロフィルカロテノイドなどの色素類によって吸収され,そのエネルギーによって,シトクロムプラストキノンプラストシアニンフェレドキシンなどの電子伝達系を通じて,水分子が酸化されてニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)が還元されると同時に,光リン酸化が起こってアデノシン5′-三リン酸(ATP)が合成される.生成されたNADPHの還元力とATPのエネルギーは,ついでカルビンサイクルまたは C4-ジカルボン酸サイクルなどの光合成サイクルによりCO2を糖,さらにはデンプンへと還元する.地球上では光合成により炭素として年間5×1010 t,有機物として年間12.5×1010 t の物質が生合成されている.これは陸上では(2.2~3.2)×1010 t の炭素,海洋では(2.2~2.8)×1010 t の炭素に相当する.

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百科事典マイペディア 「光合成」の意味・わかりやすい解説

光合成【こうごうせい】

光(ひかり)合成ともいう。緑色植物が光のエネルギーを用いて,二酸化炭素と水から有機物を合成する過程。その際に,二酸化炭素と同容量の酸素が生成され,CO2+H2O→(CH2O)+O2という化学反応で表される。硫黄細菌などの光合成細菌では水以外の水素供与体(H2S,H2S2O3,H2など)を用い,反応の結果として酸素を発生しないので,真の光合成とは区別される。光合成は細胞内の葉緑体またはそれと相同の部分で行われる。葉緑体中の葉緑素(クロロフィル)が光エネルギーを吸収し,そのエネルギーを用いてADPと無機リン酸からATPを,NADP(+/)からATPとNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を生産する。この際,水の消費と酸素の発生が伴う。以上を明反応といい,明反応でのATPの生産を光リン酸化という。明反応で生産したNADPH,ATPを使って,炭酸固定を行うが,還元的ペントースリン酸回路のみを用いるC3植物と,C4経路をも用いるC4植物とがある。明反応は葉緑体のラメラ構造,暗反応は礎質(ストロマ)の可溶性タンパク質部分で行われる。
→関連項目カルビン回路気孔クロレラザックス炭素循環葉緑素

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「光合成」の意味・わかりやすい解説

光合成
こうごうせい
photosynthesis

光のエネルギーにより生物が二酸化炭素を同化して有機化合物を生成する過程。緑色植物の場合には,クロロフィルおよびカロテノイドの働きにより光のエネルギーを吸収し,6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6O2 + 6H2O の反応で,糖類,さらにこれから多糖類を生成する過程をいう。光合成の過程は,光を必要とする明反応と必要としない暗反応とから成る。前者は,光エネルギーの化学エネルギーへの転化で,アデノシン三リン酸 ATPの生成,光エネルギーによる還元型補酵素NADPの生成およびそれに伴う O2 の発生であり,後者は上に生じた ATPと NADPを用いて CO2 を有機化合物内に固定する反応である。光合成は,緑色植物のように酸素の発生を伴うものと,紅色細菌のように硫化水素その他の物質の酸化を伴うものとがある。地表上の物質変化の過程としては水の蒸発に次いで大きく,地球上の有機物の大部分および大気中の酸素の大部分は,光合成により生成されたものと推定されている。

光合成
こうごうせい
photosynthesis

光化学反応による化学合成のこと。たとえば,光を照射しながらシクロヘキサンに塩化ニトロシルと塩化水素の混合ガスを通じることにより,ナイロンの原料であるシクロヘキサノンオキシムの二塩酸塩を合成する反応。

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知恵蔵 「光合成」の解説

光合成

緑色植物および光合成細菌が光のエネルギーを利用して二酸化炭素と水から有機物を合成する過程。緑色植物の光合成は葉緑体で行われ、酸素の発生を伴う。光合成反応には多数の複雑な代謝回路が関与するが、その代謝回路の違いから、C3植物、C4植物、CAM植物に区別される。大部分の植物はC3植物で、C4植物は二酸化炭素分圧の低下、酸素分圧の上昇に適応して後から進化したグループと考えられ、C3植物の2倍の光合成速度をもつ。トウモロコシやサトウキビなどの大型のイネ科植物がこれにあたる。CAM植物は乾燥した環境に適応して進化したグループで、夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み、光合成の材料とする。パイナップルやベンケイソウ科の植物が代表的な例。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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精選版 日本国語大辞典 「光合成」の意味・読み・例文・類語

こう‐ごうせい クヮウガフセイ【光合成】

〘名〙 緑色植物が光エネルギーを用いて二酸化炭素と水分から炭水化物を生成する過程。その際、固定された二酸化炭素とほぼ同量の酸素を発生する。葉緑素が吸収した光エネルギーで根から吸収された水を水素と酸素に分解し、水素受容体と水素が結合する明反応と、二酸化炭素の還元が行なわれて炭水化物が生成される暗反応とに大別される。後者は光が関与しない。

ひかり‐ごうせい ‥ガフセイ【光合成】

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デジタル大辞泉 「光合成」の意味・読み・例文・類語

こう‐ごうせい〔クワウガフセイ〕【光合成】

光のエネルギーを使って行う炭酸同化。明反応と暗反応の過程からなり、緑色植物では、ふつう水と二酸化炭素から炭水化物を合成し、その際酸素を放出する。ひかりごうせい。
[類語]反応化学反応連鎖反応化学変化化成化合合成腐食漂白分解加水分解感光解毒核融合核分裂核爆発

ひかり‐ごうせい〔‐ガフセイ〕【光合成】

こうごうせい(光合成)

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栄養・生化学辞典 「光合成」の解説

光合成

 植物や細菌が光エネルギーを使って無機物(二酸化炭素)から有機物(糖)を作る過程.

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世界大百科事典 第2版 「光合成」の意味・わかりやすい解説

こうごうせい【光合成 photosynthesis】

光(ひかり)合成ともいう。植物が光のエネルギーを利用して二酸化炭素CO2と水H2Oから有機化合物を合成する過程。その反応は炭酸固定の代表的な例で,より一般的には,光のエネルギーを利用してCO2を還元する過程をいう。ファン・ニールvan NielはCO2+2H2A―→(CH2O)+2A+H2Oを光合成の一般式として提唱している(1929)。光合成細菌(緑色硫黄細菌,紅色硫黄細菌などの硫黄細菌,紅色無硫黄細菌)は,水素供与体として水ではなくH2S,H2S2O3,H2,有機化合物などを用いる。

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世界大百科事典内の光合成の言及

【光合成】より

…光(ひかり)合成ともいう。植物が光のエネルギーを利用して二酸化炭素CO2と水H2Oから有機化合物を合成する過程。…

※「光合成」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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