クロレラ(読み)くろれら

精選版 日本国語大辞典 「クロレラ」の意味・読み・例文・類語

クロレラ

〘名〙 (chlorella) 緑藻植物クロレラ科クロレラ属の総称。地球上の淡水域・湿土中に広く分布し、淡水プランクトンとしてふつうに見られる。微小な球状体単細胞藻で、鞭毛(べんもう)も眼点ももたない。光合成能力が極めて大きく、タンパク質や脂肪の含有量も他の植物性食品に比べて多いので、人工培養して家畜の飼料、化粧品、飲食品、汚水浄化などに利用される。
※東京のお嬢さん(1952)〈北村小松〉人物試験「『枯草菌』のことや『クロレラ』のことで伺いたいことがありますッ!」

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デジタル大辞泉 「クロレラ」の意味・読み・例文・類語

クロレラ(〈ラテン〉Chlorella)

淡水産のクロレラ属の緑藻の総称。単細胞からなり、球状で、クロロフィルや良質のたんぱく質を多く含む。緑色植物として最も繁殖力が強い。光合成の研究などに用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロレラ」の意味・わかりやすい解説

クロレラ
くろれら
[学] Chlorella

緑藻植物、オオキスタ科のプランクトン性淡水藻。鮮緑色で、微小な球形あるいは卵形の単細胞体。径10マイクロメートル以下の微小粒体は無鞭毛(むべんもう)で遊泳力がなく、個々が離れ離れとなって、水中に浮遊分散して生育する。日本各地の淡水域に普遍的に分布し、1年を通じて出現するが、とくに夏季に旺盛(おうせい)な繁殖がみられる。繁殖法は、体内容が分割して内部に自生胞子をつくるという無性的な増殖を繰り返すだけなため、急速に殖えていく。クロレラは魚貝類の餌料(じりょう)となり、また光合成を行って酸素を発生するなどの作用があるので、水中でのクロレラ密度が適度である間は、魚貝類生活へのよい環境づくりに役だっているが、クロレラ密度が過密になると、いわゆる「鼻上げ・水変り」という状態がおきて魚貝類を一斉に殺すという惨状を呈することもある。

 一方、クロレラ体中にはクロロフィルが多く含有され、また、水中に一様に浮遊させるということも容易なため、古くから光合成研究の好材料として使用されてきた。このため、クロレラの培養条件なども早くからわかっており、培養液の処方を変えると、タンパク質あるいは脂肪の含有量の多い体にすることができる。また、生産量も、水中を立体的に使用できるために、平面的にしか使えない田畑の食糧生産よりも計算上は効率がよいなどの論が生まれ、人類の未来食糧として喧伝(けんでん)されたこともあった。しかし実際には、生産原価がきわめて高くつく、不消化分が多い、嗜好(しこう)にあわないなどの点で、人類の食糧としては不向きであることが判明した。しかしながら、こうした諸研究を通じて、やや科学的実証の欠ける面もあるが、実用面では、(1)乾燥粉末体を食べ続けると健康を保つに有効、(2)含クロレラ池水は家畜の飲料また飼料として有益、(3)クロレラ抽出液には、乳酸菌の生育を促進するある種のホルモン的物質、あるいは人間の皮膚の保健に効果のある物質を含む、などが喧伝されており、しばしば諸種の商品に「クロレラ」の名が冠せられている。

 なおまた、水産の分野では、水産動物類の「卵の孵化(ふか)→稚児→種苗→成体」の諸過程を一貫して人工管理下に行う養殖業が普及しているが、初期稚児時代の餌料としてクロレラが使われている。

[新崎盛敏]

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改訂新版 世界大百科事典 「クロレラ」の意味・わかりやすい解説

クロレラ
chlorella

緑藻類のクロロコックム目クロレラ科に属する単細胞藻類で,細胞は球形または楕円形,大きさは5~10μmである。葉緑体は通常カップ状で,光合成によりデンプンを生成する。1919年O.H.ワールブルクが培養した淡水産のクロレラを光合成の研究に用いて以来,広くこの分野の研究材料に用いられるようになった。生殖には無性生殖のみが知られ,生長した細胞は,内容が分裂して通常4個の娘細胞となる。娘細胞は母細胞の細胞壁が破れて放出され,生長して新個体となる。生育の初期における細胞を暗細胞(D),光合成により生長肥大した細胞を明細胞(L)とすると,生活環はD→L,L→nDのように表される。nは1個の明細胞から生ずる暗細胞の数で,初期の細胞に生ずる娘細胞の数に相当する。この生活環は生理学的・生化学的変化に基づいて7段階に分けられるが,この研究の発展は生活環の同時期の個体を同時に集めるいわゆる同調培養法の完成に負うところが大きい。クロレラは池,沼,金魚鉢のなかなどに生育し,しばしば水を緑色にかえる。自由生活するものと,無脊椎動物に内生するものとがある。クロレラは,その光合成速度高等植物の数十倍であり,また一般の栽培植物の太陽エネルギー利用効率が0.5~2%であるのに対し,3~10%にも達する。乾燥藻体100g当りタンパク質40~50g,脂質10~30g,炭水化物10~25gを含み,とくに必須アミノ酸のリジンとメチオニンが豊富であることから,クロレラは〈微生物タンパク〉として注目され,大きな培養池で培養された藻体が年間約300t日本で市販されている。また,クロレラと好気性細菌を用いた廃水処理の技術も開発されている。
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食の医学館 「クロレラ」の解説

クロレラ

クロレラは約30億年以上も前から棲息(せいそく)している淡水性緑藻類の一種で、繁殖速度が極めて速いのが特徴です。クロレラにはたんぱく質、葉緑素、ミネラル、ビタミンが豊富に含まれ、宇宙食としてNASAでも研究されたことで有名です。
○栄養成分としての働き
 クロレラは酸性体質を弱アルカリ性にかえる物質として注目され、酸性体質を元凶とする生活習慣病の予防に効果があります。造血作用を活発にし、貧血予防やコレステロール値の低下に役立つほか、脂肪代謝を正常化させ、肥満を防止します。クロレラに含まれるクロレラ成長因子(CGF)と呼ばれる物質は、成長を促進させ、細胞の新陳代謝を活発にする働きがあり、老化防止や感染症の予防に効果が期待されます。
 また、化学物質、重金属などの解毒作用もあります。
○注意すべきこと
 体質によって、便秘(べんぴ)をすることがあります。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロレラ」の意味・わかりやすい解説

クロレラ
Chlorella

クロロコックム目オーキスチス科の下等緑藻類の一群。藻体は単細胞で球形または亜球形。細胞壁はじょうぶで,葉緑体,ピレノイドを有し,核は単核である。分裂によって増殖する。やや有機物を含んだような水中に発生し,浮遊生活をするが,鞭毛はなく遊泳しない。この藻の炭水化物の合成力はその蛋白質の合成力とともに旺盛で,食糧源になる藻類として研究されてきた。今日ではタンクにより多量にしかも純粋に培養することも可能であり,企業的にも生産されている。細胞膜が厚いので減圧処理で膜を破壊すれば人畜の食物として利用できる。また養魚上にはよい飼料とされるし,乳酸菌培養の培養基に用いると賦活的な効果のあることが知られている。

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百科事典マイペディア 「クロレラ」の意味・わかりやすい解説

クロレラ

池,溝,金魚鉢の中などに発生する緑藻類クロレラ科の淡水藻。体は単細胞で球形〜楕円形,大きさは5〜10μmにすぎない。無性的に繁殖し,しかもその速度が速いので,生育する水を緑色に変える。20世紀初めから光合成研究で盛んに用いられた。栄養価に富むので,大量培養による食糧化の研究が注目され,さらに最近では二酸化炭素固定能力の高さから地球温暖化緩和の〈バイオマシン〉としても期待されている。

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化学辞典 第2版 「クロレラ」の解説

クロレラ
クロレラ
chlorella

緑藻綱ChlorophyceasChlorococcales目に属する単細胞緑藻.光合成能を有するクロレラの物質生産力はすぐれており,牧草アルファルファの4.5倍,タンパク質のみで比較すると大豆と小麦の50倍近い.良質のタンパク質を豊富に含むので,食糧化や飼料化が試みられている.ビタミンやミネラルにも富む.乳酸菌成長促進因子は乳酸菌飲料の製造に利用されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「クロレラ」の解説

クロレラ

 単細胞の緑藻で食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のクロレラの言及

【藻類】より

…ちなみに海藻で知られた最深の生育記録は199m(褐藻ツルアラメ)である。緑藻のクロレラや黄緑藻のフウセンモのように,土壌中や土壌の表面に生育するものや,緑藻のスミレモやクロロコックムのように,岩上や樹木の表面に生育するものもある。またラン藻のネンジュモのある種のように,ソテツやツノゴケなど他の植物の組織内に生育するものもある。…

【淡水藻】より

… 淡水藻の中には食用として利用されるものがある。おもなものにタンパク質を多量に含み栄養価の高い緑藻のクロレラとラン藻のスピルリナ,美味で干しノリまたはあえ物や吸物などの具として珍重される緑藻のカワノリ,ラン藻のスイゼンジノリとカワタケNostoc verrucosum (L.) Vaucher,中国料理に使われるハッサイ(髪菜)Nostoc commune Vaucher var.flagelliformis (Burk.et Curt) Bornet et Flach.などがある。とくにクロレラとスピルリナは光合成による高い生産性を示すので食品として注目を集め,すでに人工養殖が企業化されている。…

※「クロレラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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