電子伝達系(光合成)(読み)デンシデンタツケイコウゴウセイ

化学辞典 第2版 「電子伝達系(光合成)」の解説

電子伝達系(光合成)
デンシデンタツケイコウゴウセイ
(photosynthetic)electron transport system

植物型電子伝達系光合成細菌電子伝達系とがあり,前者酸素発生系をもつ高等植物および藻類後者は酸素発生系をもたない光合成細菌における電子伝達系である.【】植物型電子伝達系:系1および系2の二つの光化学反応系をもっている.図(a)のように,水を電子供与体として,光化学反応系2および1の共同作用によってNADPを還元する電子伝達系を非循環型電子伝達,光化学反応系1のみが関与している電子伝達系を循環型電子伝達という.それぞれの電子伝達に共役してアデノシン5′-三リン酸(ATP)が生成される([別用語参照]光リン酸化).光化学反応系1に関与している色素は,おもにクロロフィルaカロテノイドで,光化学反応系2にはこのほかにクロロフィルb(高等植物,藻類),クロロフィルc(けい藻,褐藻),フィコビリン(らん藻,紅藻)が関与しており,これらの色素類によって吸収された光のエネルギーは,反応中心クロロフィル(P700 = 系1,P690 = 系2)に集中され,そこで酸化還元反応のエネルギーとして用いられる.【】光合成細菌型電子伝達系:光化学反応系は一つである.一つ以上の光化学反応系が存在するという説もあるが,少なくとも植物型電子伝達系のように直列にはつながっていない.図(b)のように,H2Sなどを電子供与体としてNADが還元される非循環型電子伝達と,ユビキノンシトクロムbが関与している循環型電子伝達があり,これらは異なったシトクロムcを介して,平行して反応中心バクテリオクロロフィル(P800,P890)に接続している.これらの電子伝達系は,コハク酸からユビキノン,シトクロムbを介して酸素へ電子が伝達される呼吸系電子伝達と部分的に重なっており,またコハク酸が光化学反応系を介してNADを還元する電子伝達もある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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