精選版 日本国語大辞典 「優・易」の意味・読み・例文・類語
やさし・い【優・易】
〘形口〙 やさし 〘形シク〙 (動詞「やせる(痩)」の形容詞化)
[一] (恥) 人の見る目に対して身も細る思いである。
① 自分の行為や状態などにひけ目を感じる。人や世間のおもわくに対して気恥ずかしい。きまりが悪い。肩みがせまい。みっともなくて恥ずかしい。
※万葉(8C後)五・八九三「世の中を憂しと夜佐之(ヤサシ)と思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」
② 周囲や相手に心づかいして、ひかえめにふるまうさま。つつましやかである。
※大鏡(12C前)一「しげきは百八十におよびてこそさぶらふらめど、やさしく申すなり」
[二] (優) 姿や言語、振舞いなどに、こまやかな心づかいや、たしなみの深さなどが感じられるさま。また、それを優れたものとして評価すること。
① 優美である。優雅である。風雅の心がある。情趣深い。風情がある。
※源氏(1001‐14頃)蜻蛉「人づてともなく、いひなし給へる声、いと若やかに愛敬づき、やさしき所そひたり」
② (歌合・歌論の評語として) 主に歌の姿・詞または素材について、優美で風情があるさま。
※類従本元永元年十月二日内大臣忠道歌合(1118)「此の歌難じ申すべき事も侍らざめり。それがなかにも、下はふ蘆は今少しやさしうぞ見たまふる」
③ 本能・衝動などに心をまかせず、己を抑えて、自分の立場にふさわしくふるまう思慮あるさまに対して、他人が心に感じて用いるほめことば。多く、優位にある者から用いる。立派である。感心である。殊勝である。けなげである。
※今昔(1120頃か)一〇「亦卞和(べんくゎ)も不懲ず玉を奉ける極めて(やさ)し」
④ 他人に対して、心づかいがこまやかなさま。思いやりがある。情深い。暖かい心配りがある。
※御伽草子・梅津長者物語(室町時代小説集所収)(室町末)「さるにても御身はやさしき心を持ち給へる人かな。人の疲れを助けて、我が飢ゑをしのぎ給ふ志、ためしなき次第なり」
⑤ 人の態度・性格などが、従順である。おとなしい。温和である。すなおでものやわらかである。
※俳諧・太祇句選(1772‐77)夏「やさしやな田を植るにも母の側」
[三] (易) たやすいさま。
① 行き届いた心配りをしないさま。不用意である。
※今昔(1120頃か)一六「人、此を聞て、不知ざらむ所へ(やさし)く不可行ず」
② わかりやすい。平易である。理解しやすい。
③ 簡単である。容易である。
やさし‐が・る
〘自他ラ四〙
やさし‐げ
〘形動〙
やさし‐さ
〘名〙
やさし‐み
〘名〙
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