精選版 日本国語大辞典 「儘・随」の意味・読み・例文・類語
まま【儘・随】
(イ) そのとおりに任せ従うこと。
(ロ) (特に、人を表わす体言による修飾を受けて)その人の思うとおり、心のとおりであるさま。
※落窪(10C後)一「まして北の方の御ままにて、はかなき事多かり」
※浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上「いや我一人のままにもならず」
② (体言による修飾を受けて)そのものと変わらないさま。そのとおりであるさま。そっくりであるさま。
※枕(10C終)九六「うつくしみかなしがり、これが声のままに言ひたることなど語りたる」
③ (用言による修飾を受けて)そのような動作が終わって後、あらためて他の事をしないでいるさま。また、そのような状態が継続しているさま。
※源氏(1001‐14頃)末摘花「『内裏(うち)よりか』と宣へば『しか、まかで侍るままなり』」
※虎寛本狂言・二人大名(室町末‐近世初)「太刀が持てもらい度さのままでをりゃる」
⑤ (放任する気持を込めて)勝手であるさま、思い通りであるさま。
(イ) 「なり」「である」などの断定の語がつづく場合。
※史記抄(1477)一八「何にとせうともままなる理ぢゃほどにぞ」
※浮世草子・傾城色三味線(1701)湊「親達内儀に不足あって、家出をいたされふとまま」
⑥ 書物などの校訂で、「底本のまま」「原文どおり」の意を示す語。原文のままでは文意が通じにくかったり、明らかに誤りがあると認められる場合、翻字者の誤りではなく、原文がすでにそうなっているのだということを示すために、問題の箇所の右傍に片仮名で小さくママと記す。
① (多く完了の助動詞「た」につづけて、「…たまま」の形で用いる) ある動作や状態が保たれた状況で、別の動作がなされたり、別の状態が起こったりする意を表わす。
※歯車(1927)〈芥川龍之介〉一「僕は巻煙草を啣へたまま、〈略〉冷笑しない訣には行かなかった」
② (多く手紙などに用いて)理由を説明する意を表わす。…ので。…によって。「是非一度お目にかかりたきまま、御都合の程お聞かせ願えれば幸甚に存じます」
※虎明本狂言・引敷聟(室町末‐近世初)「あまりまいがみぢかく候まま、さゆうへまはりて御まい候へ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報