用言
ようげん
日本文法の用語で、「体言」などとともに、いわゆる品詞より上位の概念を表すために用いられる。たとえば、学校文法などを通じてもっとも一般に流布している橋本進吉の文法論では、「詞(し)(=自立語)」を大きく「用言・体言・副用言・感動詞」に分ける。橋本は、「用言」として「動詞・形容詞」をあげるが、いわゆる「形容動詞」については、文語では動詞・形容詞に対立する用言の一種とみてもよいが、口語では、活用形の用法や助動詞との接続などからみて、特殊の形容詞とみるのがよいと述べている。なお、「用言」は、単独で種々の職能を有し、それが活用によって示されるとするが、特徴的な職能として、単独で述語になることをあげる。また、意味的には、単に属性だけを表すのでなく、ある物がその属性を有するということを表すと述べ、「用言に叙述性がある」といわれるのはその意味であると指摘している。
一般に「用言」を活用する自立語ととらえることが多いが、山田孝雄(よしお)によれば、「用言」の本質は、陳述(主位概念と賓位(ひんい)概念とを結合・統一する精神作用の言語化)を表す点にあり、活用は、その語類が多様な陳述に応ずる結果にすぎないとされる。また、山田は、いわゆる助動詞を、「用言」が種々の陳述を果たすために「用言」から分出したものととらえ、「用言」の内部に属するものと認めて、「複語尾」と称している。
[山口佳紀]
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よう‐げん【用言】
〘名〙
① 自立語のうち、体言に対して、活用があり、何らかの
事物について、その動作・存在・性質・状態を叙述する働きを持つもの。一般に下位分類として、動詞・形容詞・形容動詞の三品詞を認める。
※詞八衢(1808)上「四段の活はあなやわの四行にはなし〈略〉第二の音きしちひみりは用言へつづく詞なり」
② 動詞をいう。
※皇国小文典(1874)〈渡辺約郎〉「用言乃ち動詞は物体の働き或ひは其の容子を顕はす所の詞である」
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用言【ようげん】
日本語の文法用語の一つ。事物の存在,動作,作用,性質,状態を表す語で,活用があり,それのみで述語となり得る自立語。動詞,形容詞,形容動詞の3種があるが,形容動詞を品詞の一つとして認めない説もある。→体言
→関連項目脚結抄|形容詞|動詞|日本語
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用言
ようげん
国文法で,動詞,形容詞,形容動詞の総称。形容動詞という品詞を認めない学者もある。これらはすべて活用をもち,かつ単独で文の述語になりうる点で,一つにまとめられる。 (→体言 )
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デジタル大辞泉
「用言」の意味・読み・例文・類語
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ようげん【用言】
日本語の動詞,形容詞,形容動詞の3品詞,すなわち活用ある自立語の総称。何らかの物事を題にしての叙述にあずかり(述語),またその叙述をもって事物の限定にあずかる(連体)。動詞は主として変化(動作作用)について,形容詞,形容動詞は性質状態について叙述するが,後の2者は動詞の叙述する変化を限定することもある(副詞的用法――連用)。意味上では後の2者は区別がないが,外形上の活用の型では明らかに区別される。動詞との別も同様に明らかである。
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世界大百科事典内の用言の言及
【接尾語】より
…副詞のト,ニ,ゼン(然)(例:奥様然),形容詞のイ,ク,ケレ,動詞(一段,カ変,サ変)のル,レ,ロ,および形容動詞のダ,ナなどの活用語尾も,文法的な意味を添えるだけの要素である。用言をなす接尾語でなんらか意味を変えるものには,体言につくブル,メク,ビル,ジミル,テキ(ダ),ダラケ(ダ),形容詞につく寒ガル,楽しム,こころよゲ(ダ)などがあり,動詞につく接尾語には起こス,教わル(受身・使役の助動詞もこの類),困りキル,走りダス,見カネル,出ニクイ(希望のタイも),忘れガチ,勝ちッパナシ,諸種の語につくシイ,ッポイなどがある。 接尾語がつくと,上の語をうける関係がもとの単語の場合と変わるものと変わらないものとがある(助動詞がつく時は受身・使役・希望の場合を除いて変わらない)。…
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