但し(読み)タダシ

デジタル大辞泉 「但し」の意味・読み・例文・類語

ただ‐し【但し】

副詞ただ」に副助詞」が付いたものから》
[接]
前述事柄に対して、その条件や例外などを示す。しかし。「入場自由。但し、子供はお断り」
前述の事柄に対する推量疑問を導く。ひょっとすると。もしかしたら。
「十月を神無月と言ひて神事にはばかるべきよしは、記したる物なし…―、当月、諸社の祭なき故にこの名あるか」〈徒然・二〇二〉
前述の事柄に対して、別の事柄を並立させる。それとも。もしくは。
江戸橋の田村屋にせうか。―西村がおさよが所で乗らうか」〈洒・辰巳之園
[副]ただ」を強めた語。
「―三宝の加護に非ずは」〈今昔・一二・一六〉
[類語]なおただもっともとは言えとは言うもののさはあれしかしだけれどもだがところがけれどもけれどだけどだってされどそれでもでもしかしながら然るに然れどもさりとてそれなのにそのくせ言い条かと言ってにもかかわらず

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「但し」の意味・読み・例文・類語

ただ‐し【但し】

(副詞「ただ」に助詞「し」のついてできたもの)
[1] 〘副〙 「ただ」の意を強めたもの。多く、漢文訓読語として用いられた。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一「愛するに偏党無きこと、羅怙羅をしたまふが如くいますものならば、唯し願ふ世尊、我に一の願を施したまへ」
※正法眼蔵(1231‐53)弁道話「さらに焼香礼拝念仏・修懺・看経をもちゐず、ただし打坐して身心脱落することをえよ」
[2] 〘接続〙
先行の事柄について補説するとき用いる。
(イ) 先行する事柄に対して、逆接的に、それに付随する条件または、例外などを追補する場合。そうでありながら。しかし。→ただし書き
※竹取(9C末‐10C初)「仰の事はいともたふとし。ただし此の玉たはやすくえ取らじを」
徒然草(1331頃)二〇二「十月、諸社の行幸、その例も多し。ただし、多くは不吉の例なり」
(ロ) 先行の事柄に対し、推量や疑問を加えつつ補説する場合。ひょっとすると。もしかしたら。
※高野本平家(13C前)一「すべてその儀あるまじ。但(タダシ)祇王があるをはばかるか」
※虎寛本狂言・二千石(室町末‐近世初)「今度はまたあちらをむかせられた。さらばあちらへ参てうたはふ。但し、御耳が遠う成らせられたかしらぬ」
② 先行の事柄に関連して、話題をかえたり、一つの事をとりあげたりするとき用いる。ところで。さて。
大鏡(12C前)五「かかれば、このふたところの御ありさま、かくのごとし。ただし、殿の御まへは卅より関白せさせたまひて」
③ どちらとも判断しかねて、並列あるいは対立する事柄をあげる時用いる。または。それとも。ただしは。
※浮世草子・好色一代女(1686)五「酒が飲れぬか、せめてひとり成とも出ぬか、ただしかへれといふ事か」

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