デジタル大辞泉
「互に」の意味・読み・例文・類語
かたみ‐に【▽互に】
[副]《「片身に」の意》たがいに。かわるがわる。
「すき事どもを―くまなく言ひあらはし給ふ」〈源・葵〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
たがい【互】 に
① 二人以上あるいは二つ以上のものが、同一の対象に対して同じような事をするさま。また、同じ状態にあるさま。
双方とも。
それぞれ。たがえに。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)六「互(タガヒ)に相ひ讒(しこ)ち諂(へつら)ひつつ」
※雁(1911‐13)〈
森鴎外〉八「殆ど物を言はなくても、互
(タガヒ)に
意志を通じ得られるやうになってゐたお玉」
②
両者が代わりあってするさま。かわるがわる。交互に。
※霊異記(810‐824)中「雄の烏〈略〉食を求めて行ける頃(あひだ)、他の烏逓(タガヒ)に来たりて婚(つる)ぶ。〈国会図書館本訓釈 逓 タカヒニ〉」
※土左(935頃)承平五年一月九日「これかれたがひに、くにのさかひのうちはとて、見送りに来る人あまたがなかに」
[
語誌](1)平安初期から用いられ、主として訓点資料など漢文系資料に見られる。平安期の典型的な和文系資料である枕草子、源氏物語、紫式部日記、
更級日記などには見られない。
(2)語の成り立ちが
動詞「たがふ」の名詞形と
格助詞「に」によっているところからも推測できるように、「たがいちがいに」「それぞれに」が元来の
意味である。
(3)②の意味は、平安中期の和文系資料においては、「かたみに」が担っていた。→「
かたみに(互━)」の語誌
かたみ‐に【互に】
〘副〙 同一の行動、
心情を、二人以上の人間が、交互に、あるいは同時に相手に対してとる状態を表わす語。たがいに。かわるがわる。相互に。
※
伊勢物語(10C前)五〇「あだくらべかたみにしける男女の、忍びありきしけることなるべし」
※
読本・
椿説弓張月(1807‐11)続「みなその
権威にや怕
(おそ)れ
けん。迭
(カタミ)に面
(おもて)をあはしつつ、ふたたび言を出すものなし」
[語誌]主として
平安時代に
散文にも
韻文にも頻用された和文系の語。
漢文訓読文では、同じ意味で「たがひに」が用いられた。中世以降、「たがひに」が一般的となり、「かたみに」は雅語的表現と意識されるようになるが、一部の
方言には残っている。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報