二段階革命論(読み)にだんかいかくめいろん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二段階革命論」の意味・わかりやすい解説

二段階革命論
にだんかいかくめいろん

資本主義的関係が残存している後進資本主義国における革命は,まずブルジョア民主主義革命であり,しかるのちに社会主義革命へと転化するという理論。 K.マルクス,F.エンゲルスは 1848年の『共産党宣言』で,ブルジョア革命は封建秩序と政治的絶対主義を打ちこわしブルジョア民主主義と資本主義とを労働者階級とともに建て,次いで労働者階級はブルジョア民主主義によって整えられた諸条件のもとで,みずからを組織して資本主義を転覆し,社会主義の建設へと向うと定式化した。これをうけて N.レーニンは,1905年の『民主主義革命における社会民主党の二つの戦術』において,ロシア革命の戦略を,労働者は農民同盟を結び専制政治打倒,土地革命,ブルジョア民主主義革命を完遂し,その後,貧農など半プロレタリア分子と手を結び社会主義革命を完成するとした。ロシア革命後,28年7月コミンテルンはその第6回大会で綱領を採択したが,そこでは,資本主義が高度に発達した国における革命が社会主義革命であるのに対して,資本主義の発達の中位の国の革命は社会主義革命に転化するブルジョア民主主義革命,すなわち二段階革命であるとされ,これが二段階革命論を全世界的に普及させ,定着化させるもととなった。

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世界大百科事典(旧版)内の二段階革命論の言及

【天皇制】より

…昭和初期の国家論争の中でマルクス主義用語として登場し,社会科学用語として定着した日本独特の君主制を指す用語。狭義には明治維新から第2次大戦での敗戦までの近代天皇制を指すが,広義には古代天皇制,戦後の象徴天皇制なども含まれる。また,天皇制は単に国家権力概念としてだけでなく,イデオロギー,社会秩序,精神構造を含む概念として使用されることがある。ここでは近代天皇制について述べる。
【明治期の天皇制】

[政治機構・機能]
 幕末の欧米列強の圧力による開港後,日本は資本主義化と中央集権的国民国家の形成が課題となったが,それを担う市民階級の形成が不十分だったため,武士階級内部の改革派によって維新の政治変革が行われた。…

【日本資本主義論争】より

…1920年代後半から30年代におけるマルクス主義陣営内の論争。革命戦略,日本資本主義の特質,天皇制権力の階級的性格,地主的土地所有の本質,明治維新の歴史的性格などをめぐって議論がたたかわされた。第2次大戦前日本社会科学界最大の論争。論争は1927年ごろから約10年間にわたって続いたが,これを二つの時期に区分できる。第1期は1927‐32年で戦略論争または民主革命論争の時期,第2期は1933‐37年で,資本主義論争または封建論争の時期として要約できる。…

【マルクス経済学】より

…したがって日本では,社会主義革命の前に,まずブルジョア民主主義革命が,したがって絶対主義的天皇制の転覆こそが進められねばならない,と。これがいわゆる〈二段階革命論〉であったが,それが日本共産党のいわゆる〈32年テーゼ〉とぴったりと一致することは,周知のことがらであった。 これに対して,雑誌《労農》に結集した山川均猪俣津南雄,向坂逸郎(1897‐1985),大内兵衛櫛田民蔵,土屋喬雄(1896‐1988)らの学者は,総じて労農派と呼ばれたが,彼らはほぼ次のように主張した。…

【マルクス主義】より


[革命理論]
 マルクス主義の核心の一つは,当然にその革命理論である。たとえば19世紀ドイツのような後進国の場合,マルクスの革命理論はしばしば〈二段階革命論〉といわれる。すなわち〈ドイツ的みじめさ〉というマルクスの規定が示しているように,ドイツには中世的・封建的な要素と近代的要素が混在し雑居している。…

※「二段階革命論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」