乳牛
にゅうぎゅう
牛乳の生産を目的として品種改良された乳用種のウシをいう。体形は、乳房が発達して体の後半部が大きいくさび形をしている。代表的な品種はホルスタインで、乳量がきわめて多いが、高温多湿の気候と山地に弱いため、日本では北海道を中心に飼育されている。ほかに、高脂肪率の乳を生産し、耐暑性もあり山地にも強いジャージー、ガンジーなども飼育されているが少数である。繁殖に用いるのは15か月齢以降で、妊娠期間は280日前後であるから、24か月齢で初産が期待される。分娩(ぶんべん)時から3日間母ウシの初乳を子ウシに自然哺乳(ほにゅう)させたのち、人工哺乳に切り替え、3~5か月齢の間に離乳させる。牛乳は、最初の1週間に分泌される初乳を除き、その後の常乳を食用とする。搾乳期間は通常10~12か月間で、分娩後2か月以内に最高乳量に達し、その後徐々に減少する。受胎率は分娩後60~90日ごろが最高であるが、乳牛の場合は一生の産乳量をできるだけ多くするために、分娩後50~60日を授精適期とする。そのため、泌乳後半期以降は妊娠の進行によって乳量は急速に低下する。次回の泌乳に備えるために約50日間は搾乳を休む。これを乾乳という。したがって、乳牛は12~14か月ごとに分娩を繰り返すことになる。乳牛は、乳を生産するため、粗飼料に濃厚飼料を組み合わせて与えられている。搾乳は通常1日2回、ミルカー(搾乳機)を用いて行われる。また乳牛は、乳だけでなく肉も利用されるが、一般にホルスタインは和牛と比較して飼料効率に優れ、赤肉率が高くて肉質もよい。
[西田恂子]
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にゅう‐ぎゅう ‥ギウ【乳牛】
〘名〙 乳をとることを主な目的として飼育される牛。一般にやせ型で、乳房の発達がよい。黒白斑のあるホルスタインのほかジャージー、ガンジーなどが代表的品種。奈良・平安時代には、薬品としての牛乳をとるため、官牧や乳牛院で、
牝牛を飼養することが行なわれた。
※高野山文書‐文治二年(1186)五月一〇日・
太政官牒「兼又伊勢役夫工・大嘗会・造内裏等
勅事院事大小国役・宇佐勅使・乳牛以下課役悉可
二免除
一之由」 〔勝天王般若経‐四〕
ちち‐うし【乳牛】
〘名〙 飲料や
乳製品の原料とする乳をしぼり取るために飼う牛。ちうし。にゅうぎゅう。
※左千夫歌集(1920)〈伊藤左千夫〉明治三七年「乳牛
(チチウシ)の小舎の流しの井戸近みふたもと植ゑし
木蓮のはな」
ち‐うし【乳牛】
〘名〙 (古くは「ちうじ」とも) 乳をとるために飼う牝牛。ちちうし。にゅうぎゅう。〔十巻本
和名抄(934頃)〕
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デジタル大辞泉
「乳牛」の意味・読み・例文・類語
ちち‐うし【乳牛】
乳をしぼり取るために飼う牛。また、そういう種類の牛。にゅうぎゅう。
ち‐うし【乳牛】
《「ちうじ」とも》乳をとる雌牛。ちちうし。にゅうぎゅう。〈和名抄〉
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出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典内の乳牛の言及
【ウシ(牛)】より
…脂肪率は3.4%くらい。〈乳牛の女王〉と呼ばれ全世界に広く飼われている。(2)ジャージー種Jersey(イラスト)イギリス海峡にあるジャージー島原産。…
【肉食】より
…脂質やタンパク質の含有量も生の牛乳より多かった。
[肉食文化成立の条件]
乳牛にならない雄牛は労働力として利用されたが,労働の内容が遊牧民とヨーロッパとでは異なっていた。前者ではせいぜい運搬用だったのに対し,後者は麦作に密着していた。…
※「乳牛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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