日本大百科全書(ニッポニカ) 「不明熱」の意味・わかりやすい解説
不明熱
ふめいねつ
fever of unknown origin
原因不明の発熱で、FUOと略称される。発熱が3週間以上にわたり、また38.3℃以上に達する数度の高熱がみられ、1週間の入院精密検査によっても原因や侵されている臓器の手掛りが得られない場合に不明熱とされる。したがって、原因の明確な熱性疾患、経過の短い良性のウイルス性疾患、微熱が持続する本態性高体温症、手術後の発熱などは除外される。
不明熱の多くは比較的ありふれた疾患の非定型的な症状であり、結核をはじめ、肝臓や胆道の感染症、サルモネラ症、腹腔(ふくくう)深部膿瘍(のうよう)など感染症の場合にもっとも多くみられ、悪性リンパ腫(しゅ)や白血病などの悪性腫瘍およびリウマチ熱や関節リウマチなどの膠原(こうげん)病がこれに次ぎ、そのほかアレルギーや亜急性甲状腺(せん)炎などの場合にもみられる。したがって、精力的な原因追求が望まれる。なかには、診断不明のままに経過するうち、治癒してしまうといった予後のよいものもある。
[柳下徳雄]